研究課題
脳梗塞巣には、虚血2日目よりIba1とNG2 proteoglycanを同時に発現するmacrophage様細胞のBINCs(Brain Iba1+/NG2 Cells)が浸潤する。BINCsはIGF-1等の神経保護因子とNG2 proteoglycanを発現するため、多能性前駆細胞の役割も期待される。BINCsの梗塞巣侵入機序へのMCP-1とFractalkineの関与を検討した。1)脳梗塞巣から分離したBINCsと一次培養astrocyte、microgliaにおいて、MCP-1とFractalkine、その receptorであるCCR2、CX3CR1のmRNA発現量をreal time PCR法で検討した結果、MCP-1、Fractalkineはastrocyteで、CCR2とCX3CR1はBINCsで高発現していた。2)Boyden chamber法で、astrocyte、microglia、fibroblast、混合したMCP-1とFractalkine に対するBINCsのmigration能を検討した結果、astrocyteおよびMCP-1とFractalkineの混合に対して促進された。3)虚血1~7日目の梗塞巣でのMCP-1、Fractalkine、CCR2、CX3CR1のmRNAの発現量を検討した結果、MCP-1、CCR2は虚血後初期からの発現が高く、その後減少し、Fractalkine、CX3CR1は経時的に上昇し、5日目と7日目で高くなった。虚血1、2日目の梗塞巣の免疫組織学的検討の結果、MCP-1は虚血1日目に血管内皮細胞で強発現し、2日目には減弱した。Fractalkine は、虚血1日目にGFAP陽性細胞で強発現し、GFAP陽性のastrocyteのendfeetが血管周囲を取り巻いていた。2日目には虚血巣でmRNAの経時的変化と一致するように、その発現がほぼ見られなくなった。また、虚血1日目の梗塞巣には、血管周囲脳実質にCCR2陽性のBINCsが侵入し、2日目には脳実質内に侵入していた。同様にCX3CR1陽性のBINCsも観察されたが、虚血2日目の方で高発現していた。以上より、虚血早期にMCP-1を高発現した虚血巣の血管内皮細胞にCCR2+のBINCsが接着し、その後CX3CR1陽性のBINCsが血液脳関門の破綻した脳梗塞巣の血管を取り巻くFractalkine陽性の astrocyteのendfeetに向かって侵入していくと考えられた。
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Journal of Neuroscience Research
巻: 91 ページ: 681-693
10. 1002/jnr.23202. Epub 2013 Feb 12.