研究課題
もやもや病の血管病理については本来生検が倫理的に不可能であり研究が行われていない領域である。我々はこの問題についていくつかのアプローチを行った。1)患者および家族の了解を得てバイパス手術中に明らかに閉塞している血管がある場合のみ術中に完全閉塞を確認後採取し病理学的に検討した。3例の検体が得られ従来のautopsyから得られた病理学的研究と比較した。興味深い事に内頸動脈の報告と同様に中大脳動脈末梢(M4)血管であるにもかかわらず内弾性板が肥厚、蛇行、重層化していた。これらの所見はごく一部ではあるが本来の狭窄部位である内頸動脈と同様の所見である事はこういった狭窄所見が脳の動脈全てに起こりうることを示している。2)MRI-CISS画像により内頸動脈、前大脳動脈、中大脳動脈の外径を測定したところ正常成人、動脈硬化性疾患の患者に比べ有為差をもって外径の狭窄が見られた。(外径径平均値;内頸動脈、4.04mm; 動脈硬化性疾患、4.32mm; もやもや病、2.61mm)次にDSAから得られた上記各動脈の内頸値(内頸動脈C5部との相対値)との相関を検討するともやもや病において病期の早期から外径の狭窄が起こっている事が明らかとなった。以上の結果からもやもや病の血管病変は収縮性変化が先行している可能性がある。われわれはこれらの変化をconstrictive remodelingと命名し、動脈硬化性の変化outward remodelingと明確に区別するべきものとして報告した。
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