研究課題/領域番号 |
23592099
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
横井 功 大分大学, 医学部, 教授 (80150366)
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研究分担者 |
北野 敬明 大分大学, 医学部, 教授 (20211196)
徳丸 治 大分大学, 医学部, 准教授 (40360151)
西田 育弘 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 教授 (90172668)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 外傷性てんかん / 外傷性てんかんモデル / てんかん焦点形成予防 / ロキシルラジカル消去剤 / ビタミンE誘導体 / 酸化ストレス / ラット脳波 / 発作脳波活動 |
研究概要 |
本年度の研究では,ヘモグロビン(Hb)を使用して,より臨床病態に近い外傷性てんかん(PTE)モデルラットを作成し,α-リポ酸誘導体として新規に合成された活性酸素消去効果と抗炎症作用を持つジヒドロリポイル-ヒスチジン亜鉛キレート化合物(DHL)のPTE焦点形成予防効果を検討した.すなわち、雄Sprague-Dawleyラットのbregmaより尾側1 mm,左側方1 mmの大脳皮質運動野内にHb溶液を5μl注入(Fe量約45nmol)したモデルラットを作成し、尾側4 mmで左右側方3 mmの2部位に硬膜外電極を装着し脳波記録用とした.大脳皮質内に生理食塩水を注入し対照飼料で飼育する対照群,DHLを0.25%含む餌料で飼育するDHL群、及び、Hbを注入し対照飼料で飼育するHb群とDHL含有餌料で飼育するHb+DHL群の4グループに分けて飼育し、脳波変化に対する影響を検討した.以上の投与法でDHLの平均摂取量は約100 mg/kg/dayとなる.さらに、DHL等のラジカル消去能を電子スピン共鳴法により検討するための基礎検討を行った. 検討の結果、異なった条件で飼育した4群のラットの摂食量,飲水量,体重変化に5ヶ月後にも差は認められず、脳波所見も対照群とDHL群との間で変化は認められなかったことから、長期投与されたDHLに毒性のないことが明らかとなった。Hbを750μg投与し通常餌で飼育したHb群ラットの脳波には、7日後よりは紡錘突発波にスパイク活動が混在し始め,1ヶ月後より紡錘波状の群発する7Hzの陽性棘波が約67%のラットに認められた.この変化は3ヶ月後にも継続していた。一方、Hb投与後にDHL含有飼料で飼育したHb+DHL群では約83%のラット脳波に発作性異常波が認められた。このため、DHLではPTE発症を予防することは困難なことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はビタミンE,グルタチオン,タウリンをマレイン酸で結合した化合物であるETS-GSを使用する予定であった。しかし、薬品の合成を依頼することになっていたみどり化学株式会社(東京)の福島工場と大熊工場が平成23年3月の福島原子力発電所の事故の影響により操業を停止したためETS-GSの入手は平成23年度中には困難となった。このため、入手可能で活性酸素種消去作用が期待できるジヒドロリポイル-ヒスチジン亜鉛キレート化合物にて検討を行ったが、満足のいく結果が得られなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
モデルラットの作成法は平成23年度と同様に行う.当初の計画通りビタミンE,グルタチオン,タウリンをマレイン酸で結合した化合物である水溶性ビタミンE誘導体ETS-GSを合成し、これを投与してヘモグロビン注入外傷性てんかんモデルラットの脳波変化やけいれん発作発症に対する予防効果を調べる。また、Hb溶液注入後1日,3日、7日、1月、3月目にラットを断頭し,大脳皮質を取り出し,脳サンプル内のヒドロキシルラジカル量をCYPMPOスピントラップ法を使用して、ビタミンCラジカル量をDMSO添加法を使用して電子スピン共鳴(ESR)装置で測定することにより、Hb投与後の脳内酸化還元状態の変化に対するETS-GSの影響を検討する.さらに、その他の水溶性ビタミンE誘導体の抗酸化作用をESR法や組織酸化物質産生量の測定から調べ、新予防薬候補を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度にETS-GSの合成が行えなかったために、合成原料化合物(α―トコフェロール等)費が繰り越しとなった。平成24年度にはα―トコフェロールなどの原料からETS-GSを合成する。モデルラットの作成は平成23年度と同様に行い、作成したETS-GS含有飼料をモデルラットに投与し、脳波や行動変化に対する影響検討する。また、モデルラット脳内のチオバルビツール酸反応物質量を分光法により、ヒドロキシルラジカル量やビタミンCラジカル量をESR法で測定して脳内レドックス状態に対する影響を検討する。これらのことからETS-GSの外傷性てんかん焦点形成予防効果を調べる。さらに、ETS-GS分子中のタウリンを他のアミノ酸に置換した化合物を合成し、これらの物質の活性酸素種消去能や脳内レドックス環境に対する影響を解析する。
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