研究概要 |
本研究では、前年度に引き続き、ratを用いて動物実験を主に行った。 セボフルレン吸入麻酔で麻酔導入後、全身麻酔下に脳表を4×4mm露出し、2×3mmの脳綿電極を脳表に置き、脳波を測定・記録しつつ、動物用のコイルを使用して連続経頭蓋磁気刺激(rTMS)条件(刺激強度、頻度、回数)を変化させた。磁気刺激前後の脳波の変化を記録し、spreading depression(SD)を誘導する条件を探索した。 刺激条件は、①刺激間隔2msecの連続二連発刺激10 Hzを10秒間、②刺激間隔2msecの連続4連発刺激10Hzを5秒間、③50 Hzで3連発刺激を与えるtrainを5 Hzで繰り返すtheta burstを用いて刺激を行った。それぞれの群において、刺激後に0.5mol KCl溶液を脳表に10μL滴下してSDを誘発し、SDの増強の有無も検討した。最も強力にSDを誘発しる刺激は③のtheta burst法と考えられ、10秒間連続することにより、脳表の血流の変化を生じることが明らかとなった。 最も強力にSDを誘発しうる磁気刺激を開頭手術は行わず全身麻酔下に実験動物(5匹)に与えた後通常通り飼育を続け、4日目に塞栓糸法による2時間の脳虚血負荷を与え、脳虚血による脳の障害の程度を検討した。すなわち、脳虚血負荷4日後にペントバルビタール(100 mg/kg, i.p.)により安楽死後、迅速に脳を摘して脳組織標本を作製し、梗塞体積を測定して虚血耐性効果を比較検討した。現在のところ、連続刺激を用いて短時間により多くの刺激を与えることが脳保護に働く可能性があることが示唆されるが、有意な差は認めなかった。吸入麻酔薬は大脳皮質の活動を抑制するので、ペントバルビタールの腹腔内投与麻酔薬に変更することでSDの導出が容易となると考えられたが、一方、potassium channelを抑制し虚血耐性が誘導されない可能性が示唆された。
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