研究課題/領域番号 |
23592107
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松前 光紀 東海大学, 医学部, 教授 (20209604)
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研究分担者 |
厚見 秀樹 東海大学, 医学部, 講師 (30307269)
黒田 輝 東海大学, 情報理工学部, 教授 (70205243)
今井 裕 東海大学, 医学部, 教授 (70138113)
今井 正明 東海大学, 医学部, 助教 (30459424)
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キーワード | MRI / 脳腫瘍 |
研究概要 |
画像診断の分野で急速に発展したMRIの内部で、病変の局在を確認しつつ、中枢神経に発生した脳腫瘍の治療を完結する、新しいターゲッティング温熱化学療法の基礎研究を行なう。 本研究は、①腫瘍組織の温度を非侵襲的にMRIで計測し、②腫瘍組織で温度感受性に抗腫瘍効果を発揮するターゲッティング化学療法を開発し、③MRI内部で非侵襲的に組織温などの物理的要素をリアルタイムにモニターしつつ腫瘍をレーザーで安全に加温し、④加温された腫瘍組織において温熱療法と化学療法の相乗効果を有する、⑤新しい低侵襲治療システムを創生する。以上を臨床応用するにあたり必要な基礎研究を行い、国民の健康と福祉に貢献することを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、リポソームから放出される抗ガン剤の組織内拡散をMRI画像にて可視化するため、リポソームにドキソルビシンとMRI造影剤であるガドリニュームを同時封入する。これにより、MRIにて加温された脳腫瘍組織内部で放出されるガドリニュームの拡散を、画像表示することにより間接的にドキソルビシンの拡散を非侵襲的に評価することが可能となる。この抗ガン剤・ガドリニューム同時封入リポソームは、これまでにない独創的なターゲッティング化学療法である。我々はこれまでの研究で、ガドリニューム単剤をリポソームで封入した製剤を静注し、腫瘍組織内部にこれが取り込まれたところを加温することにより、リポソームガドリニュームが放出されMRI画像上造影効果が得られることを、予備実験で確認した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、悪性腫瘍の脳内移植モデルを用いた、ターゲッティング温熱化学療法実験を行う。動物実験モデルとしては、MRIで撮像が容易な頭蓋骨の大きさと脳の容積を有すウサギを使用する。哺乳類ウイルス性腫瘍の一種であるshope papilloma(VX2)の細胞浮遊液(1X106 cell/0.025ml)を調製し、ウサギの右前頭部骨窓より前頭葉内に穿刺注入移植する。その後前頭葉内での腫瘍増殖を待ち、移植10日目にMRI装置を用いて腫瘍生着を確認した後、右前頭骨窓よりレーザー加温ファイバーを挿入し腫瘍組織を42℃に、腫瘍周辺の正常脳組織の浸潤部を40℃に加温する。その後各groupの脳組織を摘出し、腫瘍組織と腫瘍周囲健常組織における抗ガン剤濃度を測定し、ターゲッティング温熱化学療法の成果を確認する。治療効果の判定は、経時的なMRI撮影による腫瘍縮小率と、最終的には病理組織学的検討により行う。薬物動態の検討は、各groupの脳組織を摘出し、腫瘍組織と腫瘍周囲健常組織における抗ガン剤濃度を測定し、ターゲッティング温熱化学療法の成果を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヌードラット、ウサギなど実験動物の購入と飼育費用、麻酔薬などの動物実験用薬品、ステルスリポソーム調剤に必要な試薬、ステルスリポソーム内に封入するドキソルビシンなどの医薬品、shope papilloma(VX2)の細胞の購入費用を計上した。 また、実験結果を記録する媒体、ガラス器具など実験器具消耗品、細胞培養などに必要な試薬の購入を計上している。
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