研究概要 |
【背景と目的】加齢、高血糖、酸化ストレス下で産生亢進する終末糖化産物 (AGE)は、糖尿病合併の有無に関わらず、血管合併症進展や心血管疾患発症に関連するとの報告がある。AGEの一つであるペントシジン(PENT)が脳梗塞発症と関連があるかを検討する。 【対象と方法】(1)2008年8月~2010年12月に入院した急性期脳梗塞(患者群)401例のうち60~84歳の282例(男性189例、平均73歳)とその病型別性・5歳階級年齢比例配分させた吹田研究の対照者80例。患者群は発症3日以内に採血しPENTを測定した。(2) 2013年6月から2013年11月に当院に入院した急性期脳卒中100例(男性52例、73±12歳)の発症3.2±1.8日(第1採血)と14.7±1.6日(第2採血)に採血を行い、PENT値の変動を調べた。 【結果】(1)病型はアテローム血栓性脳梗塞(ABI)47例、ラクナ梗塞(LC)54例、心原性脳塞栓(CES)92例、その他脳梗塞(OT)89例。症例、対照群の順に、高血圧(80 vs 、53 %、pP<0.001)、糖尿病(28 vs 、15 %, p=0.019)の頻度は患者群で有意に高く、喫煙者(23、11%, P=0.03)は患者群で有意に高かった(23 vs 11%、p=0.027)。血中PENT値(平均±SD)は患者群で有意に高かった(171±81 vs 92±33 pmol/mL、p<0.001)。PENTの平均値は、対照群(92±33 pmol/mL)と比べ、各病型の方が高かった(ABI 143±60、LC 169±98、CES 185±89、OT 173±67 pmol/mL)。脳梗塞のための血中PENT値のカットオフ値は 114 pmol/mL以上で感度0.798、特異度 0.800、AUC 0.885であった。(2) 脳梗塞59例、TIA 8例、脳出血33例。第1採血の虚血性脳卒中(脳梗塞、TIA)のPENTは163±77pmol/mL、脳出血では143±52 pmol/mLであり、両者に有意差はなかった。発症後の採血時期別にもPENT値に有意差はなかった。 【結論】血中ペントシジン値は脳卒中発症後2週間以内に有意な変動はなく、114 pmol/mL以上は脳梗塞発症に対して高リスクであった。
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