研究課題/領域番号 |
23592111
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
浅野 研一郎 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (90312496)
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キーワード | プロテオグリカン / グリオーマ |
研究概要 |
悪性グリオーマは脳腫瘍の中でも生命予後が極めて不良の疾患である。その原因としてグリオーマ細胞の浸潤性の強さにより、手術 にて全摘したにもかかわらず約9割に局所再発を来すことが原因の1つとも考えられる。 そこでグリオーマ細胞の浸潤を防止し、一カ所に遊走沈着させることができれば効率的な治療を行うことができるという仮説のもと 、著者等は腫瘍摘出術後、前処置としてグリオーマ細胞に間接的細胞接着因子増強作用があることが報告された分子標的治療薬を摘出 面に塗布し腫瘍細胞を凝集させ、高濃度プロティオグリカン人工基質を重層し、グリオーマ細胞を人工基質へ吸着させ治療する実験モ デルを開発し成功した。しかしこのプロジェクトの欠点として、腫瘍細胞が吸着した高濃度プロテオグリカン人工基質へは化学療法が 無効であることや、手術にて摘出が必要なこと等、手間がかかる難点があった。一方、ガンマナイフは浸潤性に発育するグリオーマの 治療には本来理論的に不適である。しかし腫瘍細胞を高濃度プロティオグリカン人工基質に吸着させ、この部位のみにガンマナイフを 照射すれば、効率的に残存腫瘍を根絶でき、かつ周囲脳組織の放射線障害を最小限に防ぐことが可能と予想され、以下の実験を行った 。 当該年度は前年度のプロテオグリカンやAg1478の至適濃度の決定を定量的解析を行い計算し、in vitro の実験に備えた。また最終的に放射線を照射しその至適放射線量を検討した。その後in vivoの実験を行い実験モデルを完成させた。放射線照射はまず通常のX線照射を行い、 病理学的に高濃度プロティオグリカン内の腫瘍細胞が放射線により処理されていることと、周囲脳組織の浮腫の状態、周辺脳組織の放射線障害がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の定量的解析の進行が遅れin vivoへの実験計画が遅れたことが最大の原因である。解析が終了しin vivoへの実験へ進んだが、遅れを回復することは困難であった。当初の実験はおおむねメドがつき、概算的な結果を得ることができたが、病理標本の作成や統計学的解析が残っている分、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の実験の遅れを取り戻すとともに、当該年度で決定される至適条件を基にin vivoの実験を推進する。治療有効性と生存率向上を明らかにすることを目標に行うが、具体的には以下を予定する。 1) 治療の有効性の確認。以下二群に分ける。 a;高濃度プロティオグリカン人工基質を摘出し放射線を照射しない群 b;高濃度プロティオグリカン人工基質を摘出せず放射線を照射する群 以上2群を比較し、本実験の有効性を確認する。 2) 生存率の確認 1)と同様に実験を行い、生存率を求め、一連の実験効果を明らかにする。再発したものは、その再発様式を明らかとする。以上より、腫瘍細胞を吸着した高濃度プロティオグリカン人工基質が効果的に処理されていることを確認し、本プロジェクトの有効性と生存率向上を確認する。そして得られた結果をとりまとめ、成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はin vivo の実験においてはN数を増やし、定量的評価を安定させる。さらに生存率算出も行うため、より多くの試薬等の消耗費が必要となる。また長時間の細胞維持と細胞継代が必要のため、培養に伴う多くの消耗費が必要と見込まれる。また多くの統計処理を必要とするためコンピュータ周辺機器とその消耗費が必要と見込まれる。これらの消耗費で730,000円ほど見込まれる。 また最終年度であるため、横浜で行われる第72回日本脳神経外科学会総会での発表と宮崎で行われる第30回日本脳腫瘍学会へ発表予定であり、約300,000円ほどの旅費が必要となる。また論文作成を行うため、その校正料と投稿料として170,000ほど必要となる予定である。
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