ARF-BP1蛋白は、主要ながん抑制遺伝子である ARF(p14ARF)の結合蛋白であり、 mdm2と同様 p53との相互作用を介して、あるは、 p53 経路と独立して、細胞増殖やアポトーシスに関与することが知られている。そこで、頭蓋内腫瘍での役割を検討した。先ず、グリオーマ生検組織や培養細胞株を用いて検討したところ、グリオーマ細胞に種々の程度の ARF-BP1の発現を認めたが、グリオーマの組織学的な分化度、悪性度、患者予後との相関はなく、培養細胞株においても、全例(10株中10株)で、ある程度の発現がみられたが、いずれも低い発現レベルに留まり、 p53変異、mdm2増幅とは、有為な相関はなかった。すなわちグリオーマでの ARF-BP1の発現レベルは必ずしも高くはなかった。そこで、その他の頭蓋内原発腫瘍を検索したところ、胚細胞性腫瘍(36例中31例)で、特に胚腫(22例中20例)に、高頻度かつ強い発現を認めた。純型ではない混合型の胚細胞性腫瘍での検討でも、胚腫(5例中5例)に強く発現していた。すなわち、 ARF-BP1は、頭蓋内腫瘍では胚細胞性腫瘍、特に胚腫の増腫瘍性に強く関与すると考えられた。
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