研究課題/領域番号 |
23592123
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 直哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90315945)
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研究分担者 |
坪井 昭博 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附金講座教授 (10372608)
藤本 康倫 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (80589789)
木下 学 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40448064)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | WT1 / ペプチドワクチン / 悪性神経膠腫 / 治療反応性 / 予後因子 |
研究概要 |
WT1 CTLペプチドワクチン療法における予後予測因子と免疫逃避機構を解明することを目的として研究を開始した。A.予後予測因子の同定と検証 : (1) phenotype解析:治療開始前後の末梢血単核球にてCD4陽性およびCD8陽性分画におけるphenotype解析を行った。(2) WT1遺伝子産物の高発現:腫瘍からmRNAを抽出し、定量的RT-PCR法を用いて、WT1発現ベルの定量を行った。(3) WT1ペプチド投与中のDTH反応:治療期間中に4週間毎のDTH反応の陽転化を記録した。(4) 治療前後のmethionine PET (Met PET):治療前後の変化を定量評価できるソフトウェアを開発した。 B.ヘルパーペプチド併用療法の予後予測因子:上記(1)-(4)の評価に加えて、末梢血単核球をWT1ヘルパーペプチドで刺激し、産生されるInterferon-γ(IFN-γ)の測定を開始した。 C.免疫逃避現象の解明:手術標本において、WT1, HLA class I発現について免疫組織化学的に検討し、双方がペプチドワクチン療法後に減弱する傾向を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、現在遂行中の2つの臨床試験:(1)初発悪性神経膠腫に対するテモゾロミド併用WT1ペプチドワクチン療法臨床第I相試験 (2)再発悪性神経膠腫を対するWT1 ヘルパーペプチドとCTLペプチド併用療法臨床第I相試験において、予後予測因子を新たな手法で検証するとともに、治療不応例における免疫逃避機構を解明して、WT1ペプチドワクチン療法の適応確立に還元することを目的としている。従って上記の2つの臨床試験の進行具合に鑑みて、計画したすべての項目(研究実績の概要に記載したA-C)について、その解析を開始することができ、症例を重ねてきた。よって、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床試験の進行具合に応じて、A-Cの解析を継続する。さらにA、Bについては、予後予測因子候補とMRIによる治療効果判定、無憎悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などとの関係性を、統計学的手法を用いて 解析する。この中から、WT1ペプチドワクチン療法の予後予測因子として有用であるものを選択し、将来のWT1治療における患者適格基準に応用する。 C.免疫逃避現象の解明についてはさらに症例を重ね、手術標本において、WT1, HLA class I発現について免疫組織化学的に検討することを継続する。また、腫瘍内浸潤リンパ球のサブセット解析として、CD3, CD4, CD8, CD79α陽性細胞群、制御性T細胞 (Treg)、マクロファージなどの細胞動態の解析を行う予定である。最終的には、生存データとの統計学的解析を確定し、WT1ペプチドワクチン療法の予後予測因子を組み入れた、WT1ペプチドワクチン療法の患者適格基準を完成する。また、それらを国際的な学術誌に発表し、WT1ペプチドワクチン療法を含む癌ペプチドワクチン療法の発展の基盤とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行する上で、必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額が異なる事態が生じているが、研究はおおむね順調に進行しており、研究計画にも変更はない。前年度の研究費も含めて、予定通りの計画を進めていく。
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