研究概要 |
WT1 CTLペプチドワクチン療法における予後予測因子と免疫逃避機構を解明するために平成25年度までに以下の実績を得た。 A.予後予測因子の同定と検証 ① 末梢血におけるphenotype解析:治療前にCMやEMの頻度が増加している場合、予後が良好であることが明らかとなった。② WT1遺伝子産物の高発現:従来の免疫組織化学による評価と同じく、WT1 mRNAが高発現している症例の予後は良好であった。③DTH反応:DTHが早期に陽転化する症例は予後が比較的良好であることが示唆された。④ methionine PRM (parametric response mapとして開発)とMRI-RECISTによる評価と全生存期間の関連を検討した結果、methionine PRMの方が全生存期間とよく相関することが示され、報告した(Chiba Y et al., J Neurosurg 116 (4), 835-842, 2012)。 B.ヘルパーペプチド併用療法の予後予測因子の検索と検証:Aにおける①-④の評価を同様に行った。結果は多少の差異はあるものの、Aで得られたものとほぼ同等の結果であり、現在その差異について統計学的に検討している。 C.WT1ペプチドワクチン療法における免疫逃避現象の解明:症例を20症例に拡大でき、WT1ペプチドワクチン療法後で、WT1, HLA class I発現について免疫組織化学的に検討、双方がペプチドワクチン療法後に減弱することを見いだした。腫瘍内浸潤リンパ球 (TIL)のサブセット解析として、CD3, CD4, CD8, CD79α陽性細胞群、制御性T細胞 (Treg)、マクロファージなどの細胞動態の解析を行った。TILは増加しているものの、Tregの増加も認められ、これらの症例はWT1ペプチドワクチン療法に不応であったことから、WT1とHLA class I分子発現の減弱やTregの増加が免疫逃避現象の機序であると考えられた。本結果の論文を作成中である。
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