研究概要 |
脊髄に対する移植神経再生には、細胞であれ組織移植であれ、その生着には血管新生が必要である。骨髄幹細胞(Bone Marrow Stromal Cell: BMSC)は、血管内皮細胞成長因子VEGF受容体あるいは細胞間相互作用を介したnotch受容体の刺激により、血管内皮細胞のマーカー分子の発現が増加することが報告されている。これまでの我々の実験で、嗅神経鞘細胞OEC培養液中に各種神経栄養因子に加え、VEGFと血管新生促進効果が知られている肝細胞成長因子HGFを産生遊離することが示された。そこで本課題においては、OECとBMSCとの供培養で,BMSCでの血管内皮細胞マーカー遺伝子の発現量を検討するとともに、臨床応用されている嗅粘膜組織の移植後の生着状況をラットにて、基礎的解析を行った。BMSCの培養上清はOECの増殖に影響を与えなかったが、OECの培養上清はBMSCの増殖を促進した。しかし、培養上清中のVEGF遊離量は一般にBMSCの血管内皮系遺伝子の発現を誘起する濃度には達しなかった。そこでBMSCのnotch受容体を刺激するため、直接共培養を試みた。嗅粘膜中にはこれまでnotch ligandであるDLL1,DLL4の発現が発現が報告されているが、細胞は特定されていなかった。今回培養OECにはDLL1が発現していることが免疫染色で認められた。OECとBMSCの増殖速度が違う為に種々の量比で共培養を行い、 VCAM1, VEcadherin, von willebrand factorの遺伝子発現をリアルタイムPCRで解析した。その結果、各遺伝子の発現量はOECによる相乗効果はなく、BMSCの細胞量に相加的に依存した。またラットを用いた嗅粘膜の移植実験においては、単独移植において良好な生着と移植グラフト中に多くの神経繊維が確認された。
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