研究課題/領域番号 |
23592126
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
濱 聖司 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 研究員 (40397980)
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研究分担者 |
栗栖 薫 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (70201473)
星 正治 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 名誉教授 (50099090)
西本 武史 広島大学, 学内共同利用施設等, その他 (40450580)
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キーワード | 悪性グリオーマ / 中性子捕捉療法 / アデノウイルスベクター / ホウ素 / 放射線療法 / ICP / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
悪性グリオーマに対する選択的放射線治療法であるホウ素中性子捕捉療法の基礎的検討を続けている。本研究課題で、我々はアデノウイルスベクターの表面にホウ素化合物を結合させた状態で、培養細胞に感染させることを目指している。まず、金コロイド粒子をアデノウイルスベクターに結合させ、その状態で悪性グリオーマ培養細胞に感染させ、銀増感して電子顕微鏡で培養細胞を観察したところ、培養細胞内にアデノウイルスベクターと考えられる陰影を認めた。次に、ホウ素化合物をアデノウイルスベクターに結合させた後に培養細胞に感染させる実験を行うが、細胞内に十分量のホウ素を確認することは出来なかった。今、入手できるホウ素化合物では、十分量のホウ素をアデノウイルスベクターに結合させることが出来ないものと考えられた。現在、細胞内にあると思われるアデノウイルスベクターに、目的とする化合物が結合していることを、定量する手法を検討中である。 中性子照射はγ線の影響も考慮する必要があり、細胞周期と細胞死、核分裂機構(中心体複製機構)等の関連性も分子生物学的に解析している。以前、Suvivinで確認された中心体過剰複製は、細胞周期のG1/S期でも認められることが分かり、新たな分裂細胞死の機序を明らかに出来る可能性もあり、現在、詳細に検討を進めると共に、論文作成も進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
通常のホウ素化合物をアデノウイルスベクターに単純に結合させ、感染させる実験系では、十分量のホウ素を、アデノウイルスベクターのみで細胞内に導入することは出来ないものと考えられた。また、定量評価を行う為に、ICP-MSを用いているが、これでも細胞内への導入量が十分に計測出来なかった。電子顕微鏡で認めたアデノウイルスベクターと考えられる陰影に含まれる元素の量等を直接、測定して、十分量のホウ素化合物を導入できなかった原因を検索していく必要があるものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
電子顕微鏡で観察された、培養細胞内のアデノウイルスベクターの考えられる陰影の構成元素を、電子顕微鏡を用いて定量的に評価する手法の確立を目指す。その後、定量結果をもとに、アデノウイルスベクターに結合した化合物の量などを推定する。電子顕微鏡像等も含めて、これまでの結果を総合的に判断し、現在のホウ素化合物をアデノウイルスベクターに結合させようとする方法の問題点を明らかにする。そして、必要と考えられるホウ素化合物の化学構造等について、何らかの知見を得ることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の最終年度に研究を総括する予定であったが、研究過程で発生した問題(アデノウイルスベクターに十分量の化合物を結合させることが困難)が発生し、その原因を探索する為に、次年度に研究費の一部を延長する措置をとった為。 延長した研究資金をもとに、電子顕微鏡を用いた細胞内のアデノウイルスベクターの観察と、ウイルスベクターに結合している化合物の同定・定量を行う。また、現在、作成中の論文作成にも使用する予定である。
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