研究課題/領域番号 |
23592127
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山口 智 広島大学, 病院, 病院助教 (60403573)
|
研究分担者 |
弓削 類 広島大学, 保健学研究科, 教授 (20263676)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞 / 微小重力環境 |
研究概要 |
ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞は頭蓋骨骨髄に存在するが, 脳神経外科手術において穿頭あるいは開頭手術に際して発生する骨組織,骨髄を採取して得られるヒト頭蓋骨間葉系幹細胞(human mesenchymal stem cells: hMSC)を体外で培養し,神経系細胞への分化誘導能を研究した. 2011年2月以降、文書による同意が得られた広島大学附属病院での穿頭あるいは開頭による脳神経外科手術患者約20名を対象として頭蓋骨髄を採取し,血清培地下に培養増殖してhMSCを確立することに成功した.ヒト頭蓋骨骨髄間葉系幹細胞はヒト腸骨由来骨髄間葉系幹細胞とほぼ同様に増殖させることができることが判明した.増殖培養条件から,神経分化誘導条件に変更すると細胞の樹状突起の伸長が確認され,神経細胞様の形態を示すものがより多く観察されることが判明した.さらにhMSCの細胞特性を調べるためにFACSにて表面抗原を検索するとともに,神経分化を行いその分化能をRT-PCR,Western Blotting,免疫染色等にて比較研究している.現在までの結果では他部位の骨髄間葉系幹細胞に比較し,hMSCは神経マーカーであるNeurofilamentの発現がmRNA、タンパクレベルでともに強く,神経に分化しやすいことが判明している.ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞は頭蓋骨骨髄に存在するが,頭蓋骨は発生学的に四肢の骨と異なり神経外胚葉起源であるため,脳・脊髄と由来を同じくする間葉系幹細胞を使用することで神経系への分化を促進できる可能性があると考えられる.ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞の確立は世界的に見ても過去に報告が無く、その有用性が確立すれば新たな治療法を開発していくことができると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞を分離培養するために、現在まで約20名のボランティア患者に同意を得て、開頭手術に際して発生する骨組織,骨髄を採取しそれを血清培地下に培養増殖し、接着する細胞を間葉系幹細胞として実験を行ってきた.頭蓋骨髄の状態に個人差が大きく,接着培養増殖を行う際の問題点が多く,今後分離培養の効率化が急務である.現在は分離培養を行った細胞の分子生物学的検討を行うため、免疫組織学的染色,ウェスタンブロット,PCR, FACS等で解析を行っているが、初年度の研究計画である微小重力環境での検討はまだ不十分であるのが現状である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は脊髄損傷モデルラットを使用した、神経保護作用の検討を行うこととしているが、まずは移植に十分な細胞数を確保することが必要であり、至適培養条件を引き続き検討していくとともに,微小重力を応用して用いることにより、効率の良い神経前駆細胞の増殖を目指す.
|
次年度の研究費の使用計画 |
ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞の分子生物学的検討を引き続き行う必要が有り、消耗品費として培養・解析をするにあたり必要な物品費 (培養容器・培地・抗体・試薬 等)として研究費を主に使用する予定である.また24年度は国内・国外学会で現在までの研究成果を発表し、さらに現在の実験の課題解決のための見聞を広めるために必要と考える旅費等を計上している.
|