研究課題/領域番号 |
23592127
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山口 智 広島大学, 大学病院, その他 (60403573)
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研究分担者 |
弓削 類 広島大学, その他の研究科, 教授 (20263676)
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キーワード | ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞 / 微小重力環境 / 神経再生 / 間葉系幹細胞 / 骨髄間質細胞 |
研究概要 |
本年度は微小重力環境で培養したラット骨髄間質細胞を脊髄損傷モデルに移植(CL群)し,通常重力環境で培養した群(1G群)との比較を行った.CL群では1G群に比べ小型で球形の細胞が多く,Oct-4とCXCR4のmRNAの発現が強くみられた.NGF,BDNFの発現は両群で差はみられなかった.CL群では免疫染色においてCXCR4陽性率が有意に高かった(p value < 0.01).移植後のラットの運動機能変化はCL群で他の2群と比較し有意な改善がみられた(p value < 0.01).脊髄損傷21日後のH&E染色では,3群共に脊髄後索から中心部の損傷と組織の空洞化が観察された.空洞面積率はCL群で有意に小さかった(p value < 0.05).細胞移植をした1G群とCL群では,脊髄損傷部周囲にPKH26の赤色蛍光を発する移植細胞が観察された.CL群では移植細胞がより多く集簇して観察された.移植細胞の一部では, NF-HおよびGFAPの発現が観察された.脊髄損傷領域及び周辺部において,CL群ではBax陽性率が他の2群より有意に低く(p value < 0.01),Survivin陽性率はCont群と比較して有意に高かった(p value < 0.01).上記結果を論文化した(Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:35,次年度出版予定). 一方で,ヒト頭蓋骨骨髄細胞を利用した実験では,ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞(hcMSC)は神経マーカーであるNeurofilamentの発現がmRNA、タンパクレベルでともに強く,神経細胞に分化しやすいことが判明した.一方で通常の腸骨から採取した骨髄間葉系幹細胞はオリゴデンドロサイトに分化しやすいことが判明した.現在免疫不全ラットへの移植実験を行い,移植効果検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定していた,微小重力環境における神経前駆細胞の至適培養条件の確立及び3D-clinostat培養で得られた未分化細胞が神経細胞へ分化することの証明は現在引き続き検討中である. 平成24年度は脊髄損傷ラットへの神経前駆細胞の移植を行い,微小重力環境で培養したラット骨髄間質細胞が運動機能の回復を有意にもたらすとともに,組織学的回復にも好影響をもたらすことを証明し,各種学会で発表し,論文化(Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:35,次年度出版予定)した. またヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞の体外での神経前駆細胞への分化については確立され,現在は平成25年度に計画していた免疫不全脊髄損傷ラットへのヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞移植を行いその神経回復効果,保護効果を検討している.
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今後の研究の推進方策 |
ヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞の細胞確保の課題はほぼクリアーしたと考えている.今後は現在行っている脊髄損傷ラットへの移植実験にて運動機能回復及び組織学的回復を評価し,その移植効果について検討していく. またヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞の間葉系幹細胞としての組織分化やパラクライン効果の検討が必要であり,その分子生物学的解析を引き続き行う必要がある.
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒト頭蓋骨間葉系幹細胞の分子生物学的検討,免疫不全ラットへの移植を引き続き行う必要が有り,消耗品費として培養・解析をするにあたり必要な物品費 (培養容器・培地・抗体・試薬 等)として研究費を使用する予定である. また最終年度であり,国内・国外学会で現在までの研究成果を発表し,さらに現在の実験の課題解決のための見聞を広めるために必要と考える旅費,学会参加費,論文出版費等を計上している.
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