研究課題/領域番号 |
23592129
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高橋 寿明 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20363228)
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キーワード | 膠芽腫 / 腫瘍幹細胞 / Oct-3/4 |
研究概要 |
膠芽腫を含む各種固形腫瘍において幹細胞性の維持に必須の転写因子であるOct-3/4の発現上昇が確認されているが、腫瘍形成・増大過程また血管新生における役割については未だ不明な点が多い。前年度はヒト膠芽腫細胞株(U251MG)にOct-3/4遺伝子を過剰発現させた細胞株を樹立し、同細胞と親株細胞を用いて膠芽腫マウス皮下移植モデルを作成することで膠芽腫の腫瘍形成過程におけるOct-3/4の関与について検討した。Oct-3/4発現細胞株では、移植8週後の時点で親株細胞に比べて約4倍の体積を持つ腫瘍を形成した。また親株細胞由来の腫瘍で認められる広範囲な壊死領域に対し、Oct-3/4発現細胞由来の腫瘍では壊死領域はわずか20%程度であった。U251MG/Oct-3/4由来の腫瘍ではCD34陽性の新生血管が多数誘導されていた。この血管新生効果はOct-3/4による血管新生因子VEGF mRNAの発現および培養上清中への分泌亢進によることをRT-PCRやELISA法を用いて明らかにした。さらに、U251MG/Oct-3/4由来の培養上清を用いたin vitroラット腹部大動脈3次元コラーゲン培養法において多数の新生血管が誘導される様子も確認している。VEGFを誘導する因子としては低酸素誘導因子HIF1が知られている。そこで機能発現に重要なHIF1αの蛋白発現をWestern blotで確認するとOct-3/4発現細胞ではその発現が亢進していた。低酸素により分解が抑制されて、VEGFの転写を促進するとされている。血管新生は膠芽腫の増悪にとって重要な要因であり、Oct-3/4が関与していると考えられる。現在Oct-3/4によるHIF1αとVEGFを介した血管新生誘導機構の解明を目指し研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度はグリオーマの病態を増悪する腫瘍血管新生におけるOct-3/4の関与を明確にする事が主目的であった。実際に、Oct-3/4強制発現細胞ではVEGFの発現および分泌が亢進し、その発現誘導には低酸素誘導因子HIF1αが関与している事を明らかにすることが出来た。H23年度にはOct-3/4が細胞接着分子や細胞外マトリックス分解酵素の発現を誘導する事で、遊走能・浸潤能が亢進する事を国際誌に報告している(Kobayashi et al., J Cell Biochem. 113, 508-517, 2012)。血管新生と浸潤はグリオーマの病態を増悪する2大因子浸潤と血管新生であり、これらの現象にOct-3/4が積極的に関与する事を明らかにしたこととなる。この様にOct-3/4を治療の標的とする事で新規膠芽腫治療の開発に繋がる可能性を見いだした事から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今年度は皮下腫瘍での解析だったので脳内移植モデルを作成し、MRI(核磁気共鳴画像装置)を用いて腫瘍形成を観察するとともに、病理組織解析を行い、腫瘍組織内でのOct-3/4-GFP陽性細胞の局在や血管との関係を詳細に検討する。(2)血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の誘導は低酸素誘導因子(HIF-1)を介していると考えられる。HIF-1ノックダウンあるいはHIF-1阻害剤を用いて、Oct-3/4との関係を明らかにし、Oct-3/4からHIF1に繋がる分子基盤を解明していく。またOct-3/4ノックダウン細胞も樹立し腫瘍形成や腫瘍血管新生に与える影響をin vitro、in vivoの両面から解析していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品等は全て所属研究機関の既存設備を使用するため、研究費は細胞培養関連試薬一式、実験動物、遺伝子工学用試薬、生化学研究用試薬、各種抗体購入費および成果発表費用(国内学会参加、外国語論文校正費用、論文印刷費等)として使用する。
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