研究課題
本研究においては、深刻な予後不良疾患であり長らくその改善も見られていない、神経膠腫の新規な効果的治療法の開発を目指した研究を行った。すなわち、in vitro 実験および動物実験において有望な知見が得られていたナトリウムイオン / プロトン交換輸送体1(NHE1) の阻害剤である5-(N-ethyl-N-isopropyl)-amiloride (EIPA) の腫瘍細胞浸潤抑制活性の利用を目指した、前臨床試験データの蓄積と産業化を見据えた種々のデータの採取である。EIPA の in vivo における作用機作について、腫瘍細胞を一義的な阻害剤の標的と考えていたが、実際の腫瘍組織においては腫瘍細胞の浸潤に対してある種の血管成分が貢献していることが新たに判明し、その血管新生の抑制に EIPA が寄与する可能性が示された。この血管成分は TGFβ 受容体の一つである Endoglin 陽性であり、対して血管新生の重要な誘導因子である VEGF に対する受容体の陽性血管の腫瘍浸潤への寄与が少ないことが併せて観察された。すなわち神経膠腫の正常組織内への浸潤は、TGFβ によって惹起された血管を用いて行われるため、その血管新生を抑制することで浸潤抑制が可能なのではないかという示唆を与えた。このことは、本研究において同時に進めている、他の腫瘍の浸潤や転移における NHE1 抑制治療の妥当性の検討においても示唆が得られている。頭頸部扁平上皮がんのリンパ節転移において、高転移性亜株の腫瘍細胞において低転移性の親株細胞に比して NHE1 発現が亢進しており、その恒常的ノックダウンにより転移性が減弱されることが観察された。この系においてはすでに、転移における TGFβ1 を含む4つの分泌性因子の寄与が示唆されており、NHE1 と TGFβ1 が関連する可能性が示されており、今後 TGFβ 活性化における NHE1 に寄与という新規の問題が呈示された。
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GLIA
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