前年度までに樹立したGFP高発現脳転移性ヒト肺癌細胞株をヌードマウスに同所移植し、サクリファイス後の全血採取を3日単位でずらしたグループ分けをしてソーティングを行ったが、十分なGFP陽性細胞を回収することが困難であった。そこで、単なる全血の採取でなく、血管内カニュレーションによる潅流システムを作成し、圧をかけながら潅流液を流すことにより全血を回収した。これをソーティングにかけたが、やはり十分なGFP陽性細胞を回収することが困難であった。また、回収した全血を用いてそのまま接着培養及び浮遊培養を行ったが、GFP陽性細胞は増殖しなかった。 一方、平成23年度に最適化したin vitro血液脳関門再構成キット(BBB キット)に脳転移性ヒト肺癌細胞株及び脳転移性ヒト悪性黒色腫細胞株を播種して、その浸潤通過を解析した。肺癌細胞は血管内皮細胞から離れてコロニーを形成するのに対し、悪性黒色腫細胞は血管内皮細胞に接着したまま増殖することを見出した。これにより、癌細胞ごとに脳転移メカニズムが異なることをin vitroで再現し、脳転移機構の細胞生物学的解析にBBBキットが有用であることを示した。 また、8ミクロンポアメンブレンの上面に初代培養のアストロサイトとペリサイトを混合接着培養し、裏面に初代培養血管内皮細胞を接着培養したreversed BBBキットを新たに作成することにより、BBBキットと組み合わせてより多面的な解析が行えるようになった。
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