研究概要 |
【目的】前年度に続きラットグリオーマのワクチンモデルにイムノトキシンを投与して葉酸受容体β発現マクロファージの選択除去に伴うがん免疫の改善とがん増殖の抑制効果を検討すると共に、免疫原性(連続あるいは長期投与による抗イムノトキシン抗体の出現)を考慮に入れたイムノトキシンを作製し検証することを目的とした。 【方法】①凍結/融解処理したF98細胞を抗原としてFischerラット(成年:3-5ヶ月齢、老年:20-24ヶ月齢)に7日間隔で4回免疫後、同細胞を皮下あるいは脳に移植し、腫瘍体積(皮下移植)と致死率(脳移植)を経日的に測定した。イムノトキシン投与は免疫時あるいはF98移植後に行った。②低免疫原性イムノトキシンを2種類作製し(Onda Mらの報告、Proc Natl Acad Sci USA 108:5742-7とwebベースのエピトープ領域予測プログラム、IEDB, Discotopeで設計)、免疫原性の評価(FischerラットおよびBalb/cマウスにて投与し、血清中のイムノトキシンに対する抗体価の測定)を行った。 【結果】①イムノトキシンの免疫時ならびに免疫終了後における全身投与は、成年と老年共に有意なワクチン増強効果が見られなかったが、皮下移植後の局所投与により、成年群においてワクチン増強効果が確認された。②成年群および老年群において抗イムノトキシン抗体が確認された。③新たに作製した2種類のイムノトキシンは従前のイムノトキシンに比べて低免疫原性を示した。④ワクチン処理後の皮下移植モデルに新たに作製したイムノトキシンを全身投与したところ、成年群において有意な腫瘍増殖の抑制が確認された。 【考察】イムノトキシンは低免疫原性タイプを用いることにより、がんワクチンの増強が期待される一方、老年個体については更なる検討(薬剤や放射線処理との併用)を要すことが今後の課題として残された。
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