研究概要 |
2000年以降、杏林大学病院脳神経外科等において手術が施行され、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)と病理診断された39例(男:女=26:13; 平均年齢61歳)について、B細胞のgerminal center (GC)での分化を規定する各因子:Bcl2, CD10, Bcl6, Mum1とその分化分類;GC type、non-GC typeを、組織免疫染色により検討した。判定可能であった結果では、Bcl2陽性率:19/21, CD10陽性率:9/23, Bcl6陽性率:21/22, Mum1陽性率:23/24, GC:non-GC = 10:13であった。また、悪性神経膠腫に対する標準治療薬であり、JCOG脳腫瘍グループで予定しているPCNSLに対する新規の臨床試験で使用するtemozolomide (TMZ)感受性の主因子であるMGMTのプロモーター領域メチル化に対してはMSP法にて解析し、メチル化(M):非メチル化(U)は11:18であった。さらに、MTXに対する感受性因子の一つであるRFC遺伝子のメチル化解析では、M:U = 4:13であった。全症例における全生存期間(overall survival; OS)の中央値(mOS):41.1ヶ月であった。GC分化関連因子とOSの関係の検討では、Bcl2, Bcl6, Mum1は陽性・陰性の分布が非常に偏っていたこともあり、全ての因子ならびにGCまたはnon-GCの分類においても、OSに対する有意な影響は検出できなかった(p=0.248)。MGMTメチル化におちても有意差は認められなかったが(p=0.611)、これらの症例ではTMZ治療を施行されていないことから妥当と考えられる。今後、さらに症例を追加、今回解析に含まれなかった他の因子(KPSなど)を含めた解析を展開する予定である。
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