研究概要 |
2000年以降、杏林大学病院脳神経外科等において手術が施行され、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)と病理診断され、腫瘍標本が入手可能な50例(男:女=30:20; 平均年齢61歳)について以下の検討を行っている。PCNSLに対する標準治療薬であるmethotrexate (MTX)の感受性に関連する因子、MRP、LRP、DHRFの発現を免疫組織化学(IHC)を用いて評価し、また、悪性神経膠腫に対する標準治療薬であり、JCOG脳腫瘍グループで予定しているPCNSLに対する新規の臨床試験で使用するtemozolomide (TMZ)感受性の主因子であるMGMTのプロモーター領域メチル化に対してはMSP法を用いて、さらにTMZ感受性に関与することが知られているmismatch repair (MMR)機構関連蛋白であるMSH2, MSH6, MLH1, PMS2については、IHCを用いてその発現を検討している。また、B細胞のgerminal center (GC)での分化を規定する各因子: CD20, CD10, Bcl6, Mum1, CD138の発現パターンとの関連性も検討中である。さらに本年度は、これらの症例の中で、腫瘍凍結標本が十分に保管されていた14症例について、腫瘍におけるゲノム・エピゲノム解析を行い、PCNSLにおける新規の遺伝子異常を検出することを目的に、東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座の間野教授と共同研究を開始した。今後、さらに症例を追加、上記の各因子の発現と因子間の関連性、また治療効果や生命予後との関連を解析していく。また、その他の共同研究施設からの腫瘍標本の蓄積(約30-50標本を予定)の上、PCNSLの新規遺伝子異常を解析していく予定である。今回解析に含まれなかった他の因子(KPSなど)を含めた解析を展開する予定である。
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