研究概要 |
中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)38症例(男:女=24:14;平均年齢62歳)について以下の検討を行った。本研究のPCNSLは全例Diffuse large B cell lymphoma(DLBCL)であり、B cellの分化にかかわる各因子:CD10, Bcl6, MUM1, CD138の発現を免疫組織化学(IHC)の手法で評価し、さらにHans分類を用いてgerminal center (GC)とnon-GCに分けて予後との関係を検討した。また、PCNSLに対する標準治療薬であるmethotrexate (MTX)の感受性に関連する因子:DHFR, MRP family, LRPについてIHCを用いて検討している。悪性神経膠腫に対する標準治療薬であり、JCOG脳腫瘍グループで臨床試験を予定しているtemozolomide (TMZ)にかかわる感受性因子(MGMT)および、薬剤耐性機構に作用するmismatch repair protein:MSH2, MSH6, MLH1, PMS2についてもIHCの手法を用いて評価した。他に増殖能を反映するKi-67や細胞周期抑制因子p27、がん遺伝子;bcl2、mycについてIHCを用いて検討した。Clinical factorとして年齢、KPS、病変数、発生部位、治療反応、progression free survival, overall survivalを抽出しており、これまでのbio-markerと合わせて統計学的手法を用いた解析を行っている。現段階では予後に関連する因子として年齢、KPS、初期治療に対する反応(complete response)、MSH2が有意な所見として得られている。さらに近年の報告として、DLBCLの予後に影響するがん遺伝子pSTAT3とB cell分化にかかわる因子:FOXP1, GCET1が報告されており追加検討している。今後、上記の各因子の発現と因子間の関連性、また治療効果や生命予後の関連性を検討し、予後因子を探索していく。対象症例のうち15例については東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座の間野教授と共同研究を行っており、ゲノム・エピゲノム解析を行っている。PCNSLの遺伝子異常を検出・検討していく予定である。
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