研究課題
機能性下垂体腫瘍、特に成長ホルモン(GH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生下垂体腫瘍に対する従来の治療法はホルモン産生を抑制することを主眼としてきた。本研究では、ACTHに焦点をしぼり、分泌顆粒の形成と細胞内輸送、特に分泌に関わる新規因子を同定し、この抑制を行う。このことにより、機能性下垂体腺腫、ACTH産生下垂体腺腫の新規治療法の開発と大分子量ACTH産生腺腫の病態解析を目指すものである。これまでに確立してきた、GFP-GHを導入する方法を用いて、ACTH恒常的過剰発現細胞株を新規に作製した。発現vectorは、哺乳類細胞で自立複製可能なepisomal vectorを用いた。これは汎用されている発現vectorを用いて外来遺伝子を染色体への組み込む方法に比べ、短期間で安定な発現細胞株を得ることが可能であった。蛍光タンパク(GFPとその変異型をさす)を融合した野生型ACTH cDNA、splicing variantである大分子量ACTH cDNAをepisomal vectorを用いてGH3、AtT20細胞株へ導入した。遺伝子導入と発現の確認は、薬剤添加による非導入細胞の排除、FACSを用いた蛍光タンパクの発現確認とイムノブロット法により行った。さらに、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、ACTHおよび大分子量ACTH分泌顆粒の細胞内局在を観察した。CRH刺激、細胞外高カリウム刺激で、ACTHの分泌が生じることを観察し、大分子量ACTHの分泌についてACTHとの差異を観察した。細胞膜直下のACTHおよび大分子量ACTH分泌顆粒の動態とその差異を、全反射顕微鏡を用いて観察した。
2: おおむね順調に進展している
ACTH恒常的過剰発現細胞株を新規に作製することができた。
ACTHをはじめとするペプチドホルモンは、細胞外からの分泌刺激に素早く応答するために顆粒上および細胞膜上に存在する分子が複合体を形成し、ホルモン顆粒を細胞膜に繋ぎとめていると考えられている。この複合体を形成している因子を同定することが第一の目的である。試薬の購入が予定していた金額を下回ったため、繰越額が生じた。
ACTHをはじめとするペプチドホルモンは、細胞外からの分泌刺激に素早く応答するために顆粒上および細胞膜上に存在する分子が複合体を形成し、ホルモン顆粒を細胞膜に繋ぎとめていると考えられる。この複合体を形成している因子を同定するためにyeast two hybrid法を用いてscreeningを行い、関連分子について、前に述べた方法で作製した細胞株を用いて分泌細胞内における相互作用を免疫沈降法にて確認する。この際に、野生型ACTHと大分子量ACTHの差異についても確認する。繰越額も試薬の購入に充当し、研究をすすめる。
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