研究概要 |
昨年度に作成したACTHを恒常的に過剰発現する細胞株を用いた。ACTHをはじめとするペプチドホルモンは、細胞外からの分泌刺激に素早く応答するために顆粒上および細胞膜上に存在する分子が複合体を形成し、ホルモン顆粒を細胞膜に繋ぎとめていると考えられる。この複合体を形成している因子を同定するためにyeast two hybrid法を用いてscreeningを行い、関連分子について、この細胞株を用いて分泌細胞内における相互作用を免疫沈降法にて検討した。細胞膜直下に存在する、分泌顆粒については、SNARE機構との関連が示唆された。具体的には、共焦点レーザー顕微鏡下においてSNAP-25,syntaxinとの共存が示唆された。この共存は、分泌刺激下において、顕著に見られた一方で、分泌抑制下には、分泌顆粒とSNARE機構である、SNAP-25,syntaxinとの解離が示唆された。培養液中のACTH濃度を測定すると、それぞれの分泌刺激と抑制刺激下で、ACTH濃度の増減、つまり、分泌刺激下での増加と、抑制刺激下での減少が認められた。ついで問題となるのは、細胞内輸送によって細胞膜下に輸送される分泌顆粒である。この細胞内輸送については、これまでの研究により、微小管とその付随蛋白、さらにKIFなどのモータープロテインが関与していることが推察される。微小管の働きを薬物により阻害することや、アンチセンセスオリゴマーを用いて阻害することにより、これらの新規に細胞膜下に輸送される分泌顆粒が抑制されることが示唆された。
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