研究課題/領域番号 |
23592145
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
古瀬 元雅 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70340560)
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研究分担者 |
川端 信司 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20340549)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放射線壊死 / ベバシズマブ / 血管内皮増殖因子 / PET |
研究概要 |
(1)脳放射線壊死に対するベバシズマブの有効性の検証および(2)F-BPA-PETを用いた非侵襲的診断方法の確立:臨床経過、MRI、F-BPA-PETの所見より放射線壊死と判断した症例に対して、施設倫理委員会承認を得て抗VEGF抗体であるベバシズマブの投与を行った。その症例の詳細な解析を行い、ベバシズマブ投与にて浮腫の軽減率と臨床症状の改善率、ならびにF-BPA-PETのL/N比との逆相関を認めた。また、症例数は少ないが、転移性脳腫瘍の症例には均一かつ高率に効果を示した。また、F-BPA-PETで診断した症例の腫瘍無再発生存率は高く、F-BPA-PETの信頼性も期待できる結果であった。これらのデータをまとめ、論文作成、投稿中である。(3)脳放射線壊死の作用機序の解明:放射線壊死の臨床検体の免疫染色では、VEGFが反応性のアストロサイトおよび血管内皮に発現している。腫瘍の血管新生にてケモカインの関与が近年報告されており、同様に我々もケモカインの免疫染色を行ったところCXCL12およびCXCR4の関与を認めた。また、これらのケモカインに関してはマクロファージの関与を認めている。(4)動物実験による病理学的検討:動物モデルの作成については京都大学原子炉研究所の協力を得て、まずラットの正常脳に放射線壊死の作成を試みた。しかし、参考にした論文と同様の方法で照射を行ったが、放射線壊死の確実な作成ができていないのが現状である。原子炉研究所のスタッフより助言をいただきつつ、他の施設でも線源や照射範囲、照射線量などの設定を変更し、いくつかの照射方法にて動物モデルの作成を試みる予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線壊死に対するベバシズマブを投与する臨床試験が開始したことにより、症例が臨床試験に登録されるため、放射線壊死でPETを撮影した症例が臨床試験に回ってしまっている。しかし、手術例はあるため、臨床病理検体による免疫染色は順調に進んでいる。また、既存の論文を参考に放射線壊死の動物モデルを作成したが、安定したモデルを確立することができなかった。現時点では照射方法を変更して作製する予定であるが、模索中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の最大のテーマは、放射線壊死の動物モデルの確立である。 京都大学原子炉を使用してのラットへの照射実験を継続するとともに、神戸大学などとも交流を図り、現在放射線照射のプランについて相談をしているところである。場合によっては実験施設を使用させていただくことも検討している。放射線壊死のモデルが作製できれば、今まで得た知見を経時的に確認できることにより放射線壊死のメカニズムを完全に解明できると考える。メカニズム解明に到達することで、新規治療法への開発へと進めていく予定である。また、臨床試験の登録がもうすぐ終了する見込みであり、今後放射線壊死のPET所見およびベバシズマブの治療効果についてのデータの蓄積、解析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の663,156円は、当初ラットの放射線壊死モデルが安定して作成できるようにMRIの撮影によるモデルの途中経過の確認や追加のラットの費用の使用する予定としている。また、臨床試験が終了した時点で次年度使用額を予定していたPET費用に使用する予定である。
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