研究課題/領域番号 |
23592146
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
川端 信司 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20340549)
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研究分担者 |
古瀬 元雅 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70340560)
池田 直廉 大阪医科大学, 医学部, 非常勤講師 (50434775)
松下 葉子 大阪医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70512094)
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キーワード | 悪性神経膠腫 / 放射線治療 / ホウ素化合物 / 中性子捕捉療法 / 合成アミノ酸 |
研究概要 |
本研究では、腫瘍選択的粒子線治療であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のさらなる治療成績向上を目指し、理想的な新規ホウ素キャリアーとして開発したアミノ酸付加‐BSHの有用性に関し検討し、臨床応用への可能性を探っている。 昨年度までに、国内研究協力者である切畑光統教授(大阪府立大学)とともに、BNCT用新規ホウ素化合物として数種の非天然合成アミノ酸付加‐BSHが作成されている。本研究ではACBC-BSHを中心に検討し、グリオーマおよび他の癌腫の細胞株を用いて検討した。 これまでの結果から、比較的低分子の合成アミノ酸による薬剤送達は、脳腫瘍においても大いに期待できると考えられたが、細胞レベルで得られる効果(前年度実施)を十分に引き出すためには、動物モデルを用いた治療実験では、投薬方法に工夫を要するため、これらの準備研究を継続し、現在最終年度で予定の治療実験へ向け治療プロトコールの選定中である。また動物実験を行うべき他の新規候補化合物について選定を繰り返し、より効果の期待できる薬剤を引き続き模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規ホウ素薬剤による細胞内ホウ素集積を確認し従来のアミノ酸ホウ素キャリアーBPAと比較したところ、グリオーマ細胞では他の癌腫細胞株よりさらに高濃度のホウ素集積がみられている。 しかしながら本薬剤は、F98グリオーマ移植担脳腫瘍モデルラットにおいては、静脈内投与による集積は不十分で、治療可能な正常脳・腫瘍比を達成できるものの、絶対量が不足することが解った。実際には、静注投薬での正常組織比が11(従来のホウ素化合物で3~4)と良好であるが、絶対量はCEDの30%程度である。 上記を含め平成24年度は、本薬剤を用いて担脳腫瘍モデルラットに対する中性子照射実験を計画し、その線量評価・治療プロトコール確立のため、動物モデルではCEDの内容に変更を加え検討してきた。まず、静注による本薬剤の分布は、主な排出経路となった腎臓の高集積と、比較的高集積としてACBCでの集積・排泄臓器と考えられる肝・脾臓での集積がみられている。CEDによる投与では、腎への集積は低くむしろ脾臓でのごく軽度の集積がみられるにとどまり、通常の中性子医療照射では問題とならないと判断した。 これまでの結果から、比較的低分子の合成アミノ酸による薬剤送達は、脳腫瘍においても大いに期待できると考えられたが、細胞レベルで得られる効果(前年度実施)を十分に引き出すためには、動物モデルを用いた治療実験では、投薬方法に工夫を要するため、これらの準備研究を継続し、現在最終年度で予定の治療実験へ向け治療プロトコールの選定中である。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルを用いた中性子照射治療実験へ向け、治療プロトコールの選定を行い、最終目的である新規化合物の有効性を確認する。 治療に関しては、未治療群および1)アミノ酸付加‐BSH (CED)のみ、2)中性子照射のみ、3)iv BPA + 中性子照射、4)アミノ酸付加‐BSH (iv) + 中性子照射、5)アミノ酸付加‐BSH (CED) + 中性子照射、6)アミノ酸付加‐BSH (CED) +iv BPA + 中性子照射の各群を予定し、治療効果はラットの生存期間の観察と病理学的検索をもって行う。 また研究期間内には、より細胞選択的集積の高い薬剤開発および改良に努め、培養細胞によるスクリーニングを加え、候補薬剤に関してはあわせて期間内に中性子照射治療実験を計画している。本薬剤は、集積機序の一つとしてL型アミノ酸トランスポーターを利用していると考えられるが、その発現により薬剤集積ならびに治療効果を予測しうる可能性があり、組織標本を用いた免疫染色を実施予定とした。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で開発・研究を実施している非天然合成アミノ酸は、これまで申請者が有用性を示してきた新規化合物(トランスフェリン―リポソーム、EGF―デンドリマー、ポルフィリンなど)と同様、CEDによる投薬に大きな利点を有するものと考える。 本薬剤ではCEDを用い浸潤部細胞への治療効果向上が期待され、本申請課題で我々は、アミノ酸付加‐BSHのBNCT用新規ホウ素化合物としての有用性および最適な投与条件を検討し、臨床応用への可能性を探る。また、新規薬剤の臨床画像での可視化に挑戦し、個々の患者毎での適応判断、テーラーメイド治療実現の可能性を探索する。 今回の研究を通じて我々は、アミノ酸付加‐BSHのCEDによるホウ素化合物分布の改善とBNCTへの適用について、その有効性・安全性を評価し、臨床応用への可能性を明らかにする。 最終年度は、主に細胞株・動物モデルを用いた中性子照射を実施し、本薬剤の有効性を検討してゆく。昨年度までの遅延はほぼ解消され、研究計画には大きな変更がないため、計画書にのっとり使用していく予定である。 次年度使用額の408,882円は、新規ホウ素化合物(アミノ酸付加‐BSH)を用いたラット脳腫瘍モデルおよび正常ラットを用いた中性子照射実験に使用予定であったが、初年度の薬物生合成に若干の遅れが生じたため、平成25年度に使用を予定し準備が整っている。
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