研究課題
本研究では、腫瘍選択的粒子線治療であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のさらなる治療成績向上を目指し、理想的な新規ホウ素キャリアーとして開発したアミノ酸付加‐BSHの有用性に関し検討し、臨床応用への可能性を探ってきた。国内研究協力者である切畑光統教授(大阪府立大学・生命環境科学)とともに、BNCT用新規ホウ素化合物として数種の合成アミノ酸付加‐BSHを作成した。これらの薬剤を用いて悪性神経膠腫培養細胞に対し、in vitroでの集積について確認し、ACBC-BSHを用いて、腫瘍細胞への集積特性(停留時間、暴露濃度・時間の変化による薬剤細胞集積)について確認した。またBNCTでの治療効果は、集積薬剤の絶対量のみならず細胞内・外の局在にも左右されるため、免疫染色を用いてその局在を検討した。これらの実験により、坦脳腫瘍動物モデル(F98グリオーマ細胞移植ラット)を用いた中性子照射治療実験を行った。腫瘍へのホウ素集積は、ACBC-BSH経静脈投与(iv)では2.7μg10B/kg(腫瘍/正常脳(T/N)=14.9)、ACBC-BSHのCED(Convection-enhanced Delivery)24時間投与では21.1μg10B/kg (T/N=14.2)となった。ACBC-BSH CED24時間投与が至適投与条件と考え中性子照射を施行した。生存期間中央値は未治療群(26.5日)に対し、ACBC-BSH CED24時間投与群で+11日、BPA iv群で+10日、ACBC-BSH CED24時間投与+ BPA iv群で+16日間の生存期間延長を認めた。免疫染色の結果では、BPAは細胞内に均質に分布する一方で、ACBC-BSHではより核の周囲に集積し高い治療効果が期待された。ACBC-BSH CED24時間投与を用いたBNCTとBPA ivによるBNCTはほぼ同等の生存期間延長にとどまったが、ACBC-BSH をBPAに併用することで、治療効果は拮抗せず有意な生存期間延長を認めた。細胞レベルでの薬剤分布の違いが作用を拮抗させない原因と考えられ、本薬剤は悪性脳腫瘍に対するホウ素中性子捕捉療法用の新薬として期待しうると結論付けた。
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