椎間板変性疾患に対する今後の臨床応用を目標として,生体力学的環境変化により生じる椎間板細胞・組織の変性変化が遺伝子学的に制御可能かどうかを,生体力学的・分子生物学的手法を用いた多面的なアプローチにより統合的に検討することを本研究の目的とした. 具体的には椎間板細胞に力学的負荷を与え,アポトーシス関連遺伝子の発現変化を解析したのち,遺伝子強制発現およびノックダウンにより,椎間板細胞の増殖維持・誘導が起こるか検討し,アポトーシス関連遺伝子の相互作用を確認する.さらに生体力学的負荷を与えたin vivo動物実験で,これら遺伝子の椎間板組織内導入・干渉実験を行い,椎間板組織の経時的・質的変化についての調査を行う. 当該年度においてはin vivo実験として,日本白色家兎脊椎に自作の圧負荷装置を装着させ,ヒト椎間板組織にかかる生理的荷重と同等の圧負荷を椎間板組織にかけ,椎間板組織の変性変化を経時的に評価した.このモデルにより椎間板の変性を経時的にとらえることができることを病理学的,MRI画像評価から確認した. またin vitoro試験としてヒト椎間板細胞を単離・継代,3次元培養した上で自作の圧負荷装置により圧迫をかけ,細胞の状態について評価した. 最後に,ヒト細胞に対するsiRNA導入試験としてcaspase3 siRNAを作成し,ヒト椎間板細胞に導入し,RT-PCRおよびWestern blotにてその抑制効果を確認した.
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