研究概要 |
健康長寿社会の実現に向け運動器の役割に注目が集まる中、病院受診の原疾患として最多である腰痛症は、脊柱における椎間板組織の退行変性に起因した椎間板障害によることが多い。さらに椎間板は角膜と同じく中心部は無血管野であり、隣接椎体からの拡散により栄養供給を受ける特殊な組織であるため、経年的な骨硬化とともに栄養供給も低下すると進行性に変性し、椎間板ヘルニアから脊柱側弯症に至るまで多彩な病態を呈するようになる。 椎間板障害に対する治療には、摘出術や脊椎固定術などの外科的治療が普及し、一定の成果が認められているが、その限界と代替医療の可能性に注目が集まっている。当研究者は椎間板組織の変性変化には椎間板細胞のアポトーシスが大きく関与していることを明らかにした。 そこで本研究では,さらに椎間板細胞に力学的負荷を与え,アポトーシス関連遺伝子の発現変化を解析したのち,遺伝子ノックダウンにより,椎間板細胞の増殖維持・誘導が起こるか検討した.さらに生体力学的負荷を与えたin vivo動物実験で,これら遺伝子の干渉実験を行い,椎間板組織の経時的・質的変化についての調査を行った. その結果,ヒト椎間板細胞への力学的負荷によりMMP-3,13, ADAMTS-4,5 などのextracellular matrix-degrading enzymeの蛋白発現が亢進するが、caspase 3 siRNAによりin vitro gene knock downするとこれらが有意に抑制され、さらにin vivoレベルでも再現されることを確認した.これらの結果より,caspase 3をターゲットとして生体力学的環境負荷時における椎間板変性抑制効果が証明された.
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