研究課題/領域番号 |
23592156
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
渡辺 秀臣 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (40231724)
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研究分担者 |
山路 雄彦 群馬大学, 保健学研究科, 准教授 (90239997)
吉田 朋美 群馬大学, 保健学研究科, 助教 (00312893)
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キーワード | C2C12筋原細胞 / 筋分化 / community effect / リハビリテーション / 股関節装具 / 筋力増強 |
研究概要 |
平成23年度に、C2C12筋原細胞の筋分化におけるcommunity effectを、濃度差として16,000 cells/cm2と2,500 cells/cm2の間で明確に確認でき、その関連分子として,ドレブリン蛋白が同定された。これを基に,今年度は昨年度の推進予定どおり細胞密度に関連する運動因子autocrine motility factor (AMF)に着目して、AMFの観点からその分子の役割をいろいろな角度から解析したところ,ハイパーサーミアにおける細胞の運動能は,phagokinetic assay及びwound healing assayで抑制されることが明らかとなり、その細胞運動機能活性の低下はAMFの蛋白及びRNAメッセージの発現低下によって引き起こされていることが明らかとなった。本研究課題の主要な筋に分化する筋原細胞はC2C12細胞を用いる計画であったが,非常に稀な疾患で筋細胞と同じ間葉系である骨の間葉系幹細胞の異常増殖が病態であると考えられるGorham病の患者の組織採取ができたために,筋分化への異なったアプローチを目的にこの細胞培養に着手したが、長期培養株の確立には至らなかったものの,採取患者の経過が良好であったので、症例報告をすることができた。一方,23年度にリハビリテーションの臨床で、股関節の筋力の増強が関与する股関節装具の効果がTimed up and go (TUG)testに反映されることが明らかにしたが、本年度ではその一因として、罹患股関節の外施時に筋力増強効果を発現することを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度に細胞分化の異なる細胞密度を比較的容易に到達でき,その分化発現を複数の分子種で確認し,かつ関連分子として新規のドレブリンが確認できたことは当初の予定を計画以上に進展させた。貴重な症例からの筋原細胞の培養細胞確立には至らなかったが,community effectに関連するphenotypeとして運動能に着目して、AMFにターゲットを絞りその基礎的発現機構を解明したことは直接的なcommunity effectの関連の実証には至らなかったものの,計画どおりに進んでいるといえる。また、リハビリテーションの臨床で、股関節の装具を用いて股関節の筋力の増強メカニズムを明らかにしたことは,筋分化の臨床的目的である筋力増強機序の新たな展開を導き,臨床へのフィードバックの観点から本研究は計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度でmicroarrayを用いて確立されたcommunity effectに関与する分子種の中で、ドレブリン以外の細胞接着、細胞骨格に関連するもの、あるいは可能性のある分子種での筋分化での蛋白、RNA messageの発現形態を確認し、引き続き筋分化のメカニズム解明にアプローチする。細胞密度では細胞の運動に大きく関連するので運動関連分子autocrine motility factor (AMF)の役割の解明を進めるとともに筋分化での直接的関連の解析を行う。また、リハビリテーションに有効な筋力増強効果をもたらす装具療法の解析を進め、臨床への還元の観点からのアプローチも進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では筋分化の詳細な時間的分子発現を解明し、リハビリテーションに有効な筋力増強効果をもたらすトレーニングの開発に導入する。また、実際の臨床で股関節装具により得られる筋力増強に関する知見との比較検討を行い、運動器疾患のリハビリテーションの有効性を高める。さらに、細胞生物学的に得られた、筋分化に関する分子発現とその臨床での応用について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。こうした基礎実験や解析のために必要な資料、消耗品に研究費を使用するとともに,研究に必要な知識 、技術の先進的な情報の交換のために旅費として活用し,論文作成等の経費として使用する予定である。
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