研究概要 |
前年度は、ラット腕神経叢節前および節後損傷モデルの作成と疼痛発生メカニズムの検討について行った.Wister rat30匹を用い、右腕神経叢下神経幹を展開.そのまま閉創したsham群(以下S群),下神経幹を引き抜いて節前損傷を発生させたavulsion群(以下A群)、下神経幹を切断して節後損傷を発生させたcut群(以下C群)を使用した(各群10匹). 疼痛行動は機械刺激(von Frey)及びCatWalk(歩行解析)を使用し,術後0,3,6,9,12,15,18,21日に評価した. 組織学的評価は術後7・21日目に脊髄・DRGを採取,免疫組織化学染色法を用い脊髄をGFAP及びIba-1で、DRGをCGRP、ATF3で染色した.結果、von FreyはS群に比しA群が疼痛過敏を呈したのに対し(p<0.01), C群では感覚脱失を認めた. 一方でCatWalkの立脚時間はA群, C群ともS群に比し有意に短縮した(p<0.01). 免疫染色は, GFAP,Iba1陽性細胞数はA群, C群はS群に比し有意に増加し(p<0.01), Iba1陽性細胞数はA群ではC群に比し有意に増加を認めた(p<0.01).ATF3陽性細胞数はS群に比しA群、C群において有意な増加を認めた(p<0.01)が、A群とC群の間に有意な差を認めなかった(p>0.05)。また、CGRP陽性細胞数は有意な差を認めなかった(p>0.05)以上の結果から、腕神経叢節前損傷モデルと節後損傷モデルでは疼痛の発生機序が異なることが示唆された。特に引き抜きモデルでは脊髄でのmicroglia活性が疼痛過敏に関与しており、脊髄障害性疼痛の関与の可能性も考えられ、臨床的事実を強く裏付ける結果となった.
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