研究概要 |
石灰沈着性腱炎は整形外科外来において日常的に経験する疾病である。本研究は、これに対する治療のうち特に石灰化を抑制し、かつ吸収させるという効果が臨床上経験されている、H2ブロッカーについての基礎的研究である。本研究における学術的特色としては、これまでの報告が臨床上の経験的報告が主であったのに対し、本研究では、in vitro実験として、石灰化させた各種細胞を用い、in vivo実験としてTTW/Jic-ICR(ttw/ttw)mouseを用いることにより、ヒスタミンH2受容体拮抗薬の石灰化抑制の効果を基礎的に解明しようとする点にある。 前骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞を用いた実験では、BMP2の石灰化誘導効果に対して、H2ブロッカーは抑制的に、ヒスタミンは促進的に作用していることがすでに確認された。石灰沈着性腱炎に対するH2ブロッカーの石灰化抑制のメカニズムを明らかにするため、アキレス腱の自然石灰化をおこすTTW/Jic-ICR(ttw/ttw)mouse(Nat Genet. 1998 Jul;19(3):271-3)にヒスタミンH2受容体拮抗薬を投与し、アキレス腱の石灰化が抑制されるかを調査。また、ヒスタミンの骨軟骨代謝における役割を遺伝学的に証明するため、ヒスタミンノックアウトマウスとTTW マウスを交配により生まれる複合変異マウスにおけるアキレス腱石灰化の程度について解析した。対象と方法:生後4週齢のTTW/Jic-ICR(ttw/ttw)mouse 24匹に、Famotidineを濃度4.57 mg/L(*)で飲水に混和し、投与後4週(8週齢), 8(12), 11(15), 14(18), 17(21)で採材しμCTで腱の石灰化量の増減につき評価し、組織切片についても評価した。結果:μCT の解析の結果Famotidine投与群において濃度依存性に腱の石灰化が抑制された(p<0.05)。また組織染色においても同様の傾向がみられたことより、Famotidineはin vitro, in vivoにおいて腱石灰化抑制能を有することが解明された。
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