研究課題/領域番号 |
23592161
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
武内 恒成 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90206946)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 神経科学 / 神経再生 / 神経発生 / 核酸医薬 |
研究概要 |
脊髄損傷の治療に向けて、iPS細胞/ES細胞の移植による治療が謳われ多くの試みがなされつつある。 しかし脊損後には、損傷炎症に続くコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)の発現上昇が神経の再生を阻害し、その後損傷部のCavitationに生じる線維性の瘢痕が完全に神経再生をブロックしてしまう。この初期過程で、A):コンドロイチン硫酸(CS)は本当に神経再生を阻害しているのか? 再生阻害能はCSにあるのか、コアタンパク質にあるのか?その作用機構は? B):線維性瘢痕の形成はCSの発現やグリア性瘢痕の形成と時間空間的にいかなる相関があるのか? さらにはC):神経再生治療に向けCSなどの抑制因子を人為的にいかに制御すべきか、を明らかにすることは脊髄損傷治療においては非常に重要である。 しかしながら、再生治療の今後を考える上でも、これら根本となる部分について未解明な点が未だ多い。 申請者は最近、コンドロイチン硫酸(CS)転移酵素の遺伝子欠損マウスの樹立に成功した。このマウスを用いた脊髄損傷モデルから、CSそのものが果たして真に再生阻害因子であるか、神経への分子阻害メカニズムを解明する。さらに脊髄損傷治療と臨床応用へ向け、コンドロイチン硫酸等の阻害環境要因を人為的に制御し、移植幹細胞を効果的に損傷部に保持し損傷領域の神経再生を促す環境を保持するためのバイオマテリアルを用いた治療方向性を模索する。 今年度は上記A)およびC)において、CSノックアウトマウスを用いることでCSの減少量が損傷後修復と生理学的回復に直接つながることを示すことができCSの再生阻害因子としての直接的な証拠を示すことA)、さらにはこの結果を踏まえてバイオマテリアルを用いて損傷部特異的なCS合成酵素のノックダウンを可能としたC)。これは今後の核酸医薬治療にもつながる重要な知見であると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究当初計画では、遺伝子欠損マウスでの解析を踏まえて研究後半にバイオマテリアルを用いた組織部位特異的(脊髄損傷部特異的)ノックダウンを計画していた。遺伝子欠損マウスでの脊髄損傷後修復機能が想像以上に進んだこと、さらに計画のアデノウイルスを用いた遺伝子抑制実験を進めたうえでアデノウイルス自体が持つ生体に及ぼす炎症性から、急遽、バイオマテリアルを用いたノックダウン(遺伝子抑制)実験を開始した。さまざまな材料の組み合わせから想定以上の進展を示すシステムの構築に成功した。そのため後半に計画していた研究が思わぬ進展を見たため計画全体の前倒しが可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、マウスを用いたノックダウン実験とバイオマテリアルを用いての損傷領域の再生環境を維持する研究を、組織化学的解析と分子生物学的解析によって進める。また、当初計画のアデノウイルスを用いた研究が、アデノウイルス自体が持つ炎症性から当初計画基準を満たさない可能性が示唆された。そのため現在、アデノウイルスではなくアデノ随伴ウイルスとレンチウイルスを用いた研究も開始した。これらによって上記課題は克服できるものと考えている。これら研究の組み合わせから治療を目指した応用研究にむけてさらに加速度を持って推進する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降はマウスを用いた解析と、上述のウイルスなどの改変などを含めた多くの動物実験と分子生物学的試薬を必要とする。特にウイルス実験に関しては昨年度計画からさらに推進するために対応策はすでになされているが試薬や研究推進のための情報収集が必要となる。 さらには昨年度を含めた研究成果発表のための論文投稿および学会(日本整形外科学会基礎、分子生物学会、神経科学会)などの成果発表も予定している。
|