研究課題/領域番号 |
23592163
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柿木 良介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20314198)
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研究分担者 |
太田 壮一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70592484)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 末梢神経 / 神経再生 / 骨髄間葉系幹細胞 / Lac-Z / 犬 |
研究概要 |
数種類の人工神経は、米国ではFDAの許可を得て、臨床の場ですでに使用されている。しかし人工神経を使って良好な神経再生を獲得するには、神経欠損距離が短いことや知覚の再建にのみ使用するなどの制約があり、まだまだ自己神経移植の成績を凌駕できるものではない。骨髄間葉系幹細胞は、その置かれた環境により、骨、軟骨、脂肪、神経系細胞に分化することが知られており、増殖も早く、培養も比較的簡単である。我々の開発した血管含有チューブ内は、血流に富み、かつその両端に縫合された神経断端より様々な神経好性、栄養因子が分泌されている。そのような環境に骨髄間葉系幹細胞を移植すれば、細胞はその豊富な血流と神経因子により、神経系細胞に分化、増殖し、神経再生を促進させるのではないかと仮説を立てて実験を立案した。チューブ内に骨髄間葉系幹細胞を移植した論文は散見できるが、本実験のように神経チューブ内に移植された細胞の細胞外環境を考慮し、血管含有させたチューブを用いた実験はない。 本年移植を行った4頭の結果のうち、再生神経の組織学的検索はまだ完成していないが、電気生理学的検索によれば、12週で、骨髄間細胞移植血管含有チューブ内の再生神経の運動神経伝導速度は、対側肢に行った3cmの自己神経移植の48%、小指球筋のM波の振幅は27%であったが、術後24週では、運動神経伝導速度は72%、小指球筋のM波の振幅は59%まで回復した。骨髄間細胞移植血管含有チューブ内での再生神経は、自己神経移植には及ばないが、良好な神経再生を示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はラットを用いて、血管含有チューブ内に移植した骨髄幹細胞は、シュワン細胞様に分化し、それらが神経再生を促進させた可能性を示唆した(T. Yamakawa et al. Cell transplant 2007)。今回ラットより高等動物である犬を用いて3cmのgapのある骨髄間細胞移植血管含有チューブ内での神経再生を検討した。現在ビーグル犬4頭に手術を行った。内3頭ですでに24週の電気生理学的検索と神経標本の採取が終わっており、1頭も12週の電気生理学的検査を終了している。再生神経の組織学的検索はまだ完成していないが、電気生理学的検索によれば、12週で、骨髄間細胞移植血管含有チューブ内の再生神経の運動神経伝導速度は、対側肢に行った3cmの自己神経移植の48%、小指球筋のM波の振幅は27%であったが、術後24週では、運動神経伝導速度は72%、小指球筋のM波の振幅は59%まで回復した。骨髄間細胞移植血管含有チューブ内での再生神経は、自己神経移植には及ばないが、良好な神経再生を示していた。今後LacZ recombinant adenovirusを予め感作させた骨髄幹細胞を移植した血管含有チューブを作成し(H. Miwa J Neuropatho Exp Neuro 2001)、再生神経内に骨髄幹細胞由来の細胞が残っているか検索を続ける予定である。また移植後24週で採取した骨髄幹細胞移植血管含有チューブ内の再生神経片および対側の自己神経移植片内を組織学的に観察して、再生神経有髄軸索総数、平均有髄軸索直径、平均有髄軸索密度を測定する予定である。そして最終的に骨髄間細胞移植血管含有チューブ内では、自己神経移植片内に比較しどの程度の神経再が起こるか、比較検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
さらに2頭の犬に対して同上の実験を行い。さらに2頭の犬に対しては、移植する骨髄幹細胞にLacZ recombinant adenovirusを予め感作させ、移植12週目に神経管内の再生神経にβ-galactosidase染色を行ない、再生神経内に骨髄間葉系幹細胞由来の細胞が存在するかを確かめる実験を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験費用としては、2年目に動物代(イヌ4頭、約30万円)が必要になり、その輸送費、税金、飼育費、飼料費用などの雑費で40万円計上している。実験用具に関しては、2年目は前年に使用した手術室の使用料の支払いに30万円計上している。試料作成、細胞培養、試薬、ウイルスベクターの作成で2年目40万円を計上した。
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