研究課題/領域番号 |
23592163
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柿木 良介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20314198)
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研究分担者 |
太田 壮一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70592484)
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キーワード | 骨髄幹細胞 / 末梢神経再生 / 人工神経 / 血管茎 |
研究概要 |
我々はラットで、血管含有チューブ内に移植した骨髄幹細胞はシュワン細胞様に分化し、それらが神経再生を促進させた可能性を示唆した(T. Yamakawa et al. Cell transplant 2007)。今回、より高等動物であるイヌを用いて3cm gapのある骨髄幹細胞移植血管含有チューブ内での神経再生を検討する実験を行っている。現在ビーグル犬6頭に手術を行った。内5頭ですでに12週、24週の電気生理学的検索と神経標本の組織形態学的検索が終わっており、残りの1頭も12週の電気生理学的検索を終了している。電気生理学的検索によれば、12週で、骨髄幹細胞移植血管含有チューブ内再生神経の運動神経伝導速度は、対側肢に行った3cmの自己神経移植の48%、小指球筋のM波の振幅は27%であったが、術後24週では、運動神経伝導速度は72%、小指球筋のM波の振幅は61%まで回復した。また移植後24週で採取した骨髄幹細胞移植血管含有チューブ内での再生神経片と対側肢の尺骨神経に作成した自己神経移植片のそれぞれの横断切片を組織形態学的に観察して、再生神経有髄軸索総数、平均有髄軸索直径、平均有髄軸索密度を測定した。骨髄幹細胞移植血管含有チューブ内再生神経片の有髄軸索総数は6744、平均有髄軸索直径1.64μm、平均有髄軸索密度10274/mm2であった。対側肢に行った自己神経移植片の再生神経有髄軸索総数は7614、平均有髄軸索直径1.86μm、平均有髄軸索密度7712/mm2はであった。骨髄幹細胞移植血管含有チューブ内での再生神経は、自己神経移植には及ばないが、良好な神経再生を示していた。さらに1頭追加し、電気生理、組織学的検索を進める予定である。また2頭を用いて移植した骨髄幹細胞がチューブ内の再生神経内に留まっているかの検索を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イヌからの骨髄液の採取、骨髄幹細胞の抽出、培養、イヌの麻酔、イヌ尺骨神経3cm欠損を尺骨動静脈含有骨髄幹細胞移植チューブで架橋する手術、術後12, 24週での電気生理学的解析、術後24週での再生神経の採取とその組織学的解析に関しては、ほぼ完全に達成する事が出来た。骨髄幹細胞移植血管含有チューブ内の再生神経にどれだけの骨髄幹細胞由来細胞が残っているかを検索する為、LacZ recombinant adenovirusを予め感作させた骨髄幹細胞を血管含有チューブに移植(H. Miwa J Neuropatho Exp Neuro 2001)する実験を計画したが、予備実験として行なったラットの場合と比較して、イヌでは、LacZ recombinant adenovirusで感作できる骨髄幹細胞が極端に少ないため、現在難航している。今後、骨髄幹細胞をCMdyeIで標識する方法に変更し、CMdyeI(インビトロジェン)で標識した骨髄幹細胞を上記の血管含有チューブに移植し、6週間後のチューブ内の再生神経内に残存するCMdyeIで標識された骨髄幹細胞由来細胞の検索を行なうことを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年10月には、再生神経内に残存する骨髄幹細胞由来細胞の同定をふくめた、すべての実験を終了する予定である。データの解析も同時進行する予定である。10月以降は、論文の作成と平成26年度の日本整形外科学会基礎学術集会での研究データの公表を目標に、データの整理、関連情報の取得を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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