研究概要 |
(1)本研究では、ビーグル犬8頭を用いた。神経チューブ移植実験の約3週間前に、両腸骨より骨髄液を採取し、骨髄間葉系幹細胞(BMC)を分離培養した。内7頭では、イヌ右前肢の尺骨神経に3cmのgapを作成し、培養したBMC3X107個を血管含有チューブ内に移植して架橋した。左尺骨神経には、自己神経移植モデルとして、3cmの尺骨神経を採取し、中枢と末梢を入れ替えて採取部に再移植した。血管含有チューブは、polylactic acidとpolycarprolactoneを7:3で配合して作成し、そのなかに尺骨動静脈を挿入した。 移植後12週と24週で血管含有チューブと自己移植神経内での神経伝導速度、小指球筋でのM波振幅を測定した.また24週後で、血管含有チューブまたは自己神経移植片の遠位1cmで神経組織を採取し、組織形態学的解析を行った。残りの1頭では、CM-dye Iで前処置したBMCを血管含有チューブ内に移植し、再生神経をS-100, GFAPで免疫染色した。 (2)12週で、BMC移植血管含有チューブ内の再生神経の運動神経伝導速度は、対側肢に行った3cmの自己神経移植の52±35%、小指球筋のM波の振幅は28±30%であったが、術後24週では、運動神経伝導速度は自己神経移植の88±34%、小指球筋のM波の振幅は49±12%まで回復した。また術後24週でのBMC移植血管含有チューブ内の平均再生軸索直径は、自己神経移植の84±13%、平均再生軸索総数は、94±63%、小指球筋の筋湿重量は、84±21%であった。BMC移植血管含有チューブ内での神経再生速度は、自己神経移植に劣るが、チューブ内の24週での神経再生は、ほぼ自己神経移植に匹敵した。CM-dye I陽性細胞の一部にS100、GFAP陽性細胞があり、移植したBMCの一部はシュワン細胞に分化したと考えた。
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