研究課題
脊髄損傷では最初の損傷によって誘導される二次的な損傷領域の拡大が、損傷後の麻痺の程度に悪影響を及ぼすと考えられている。α1インテグリンは損傷後に一過性の発現を示すことなどから、脊髄損傷後において何らかの役割を担うと仮定し、研究を行ってきた。前年度、前々年度においては脊髄損傷後の運動機能の評価には比較的大きなバラつきが生じていたため、それまでに用いていたモデルの作製と損傷後の運動機能の回復の評価の改善を行い、安定な結果を得るに至っている。本研究では、脊髄損傷におけるα1インテグリン遺伝子の重要性を評価するために、ノックアウトマウスを用いてモデル作製を行い、運動機能の評価を行った。その結果、ノックアウトマウスと野生型マウスを比較すると、運動機能の回復に明らかな差があることが分かった。本年度は、前年度に引き続いて、免疫組織染色法による解析を行い、α1インテグリンを発現する細胞種の同定を試みた。しかし、損傷部位では複数の細胞種が混在し、非常に複雑であった。よって同定結果の確定には別の手法での追加実験が必要と考えている。しかしながら、発現細胞として有力な候補であると考えられた細胞種を用いて、脊髄損傷におけるα1インテグリンの働きについて分子レベルでの検討を行った。その結果、その役割は損傷後の炎症反応に関連する可能性が示唆された。本成果は、脊髄損傷後の二次損傷で生ずる炎症反応の分子メカニズムの理解に貢献するものであると考えられる。
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Neurosci Lett.
巻: 544 ページ: 25~30
doi: 10.1016/j.neulet.2013.02.064.