研究課題/領域番号 |
23592171
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
岡田 充弘 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40309571)
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研究分担者 |
高松 聖仁 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究医 (30295688)
上村 卓也 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 後期研究医 (10597321)
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キーワード | 末梢神経絞扼性障害 / 電気生理学的検査 / 血管造影 |
研究概要 |
末梢神経は長期間圧迫を受けると、圧迫部位で神経上膜・周膜の線維化を生じることが知られている。末梢神経絞扼性障害では、靭帯等による外部からの神経圧迫以外に、圧迫により発生した神経自体の線維化による、神経の構成組織自体から圧迫を受けている可能性がある。現在末梢神経障害の手術は、外部からの神経圧迫要因を解除することのみに着眼が置かれている。しかし、神経自体の線維化が重度である場合は、この線維化も解除しなければ、十分な神経の除圧が得られないことが推測される。 本研究では、末梢神経絞扼性障害における神経の除圧範囲を客観的に決定することが目的である。その方法として、術中に、電気生理学的検査と、神経栄養血管の血管造影を行なっている。実際は、外部からの神経圧迫要因を取り除き、神経上膜の剥離前後で、それぞれの検査を行なっている。電気生理学的検査は、神経伝導速度の計測を行い、伝導速度が神経上膜剥離後に改善するかどうかを評価している。 末梢神経束内・外には、豊富な血流が存在しており、神経の圧迫があれば、神経の血流循環障害が起こることが予想される。神経栄養血管の造影は、従来の画像検査では困難であったが、近年外科手術で、近赤外蛍光画像装置を用いて局所微小循環の評価が行われるようになった。本研究では、この技術を用いて、神経栄養血管の造影を行なっている。神経上膜の剥離前後で、末梢神経圧迫部での神経栄養血管の血流循環が改善するかどうかを評価している。 これらの術中の所見と、定期的な術後検査を行い、術後の神経回復の程度との関連性について調べ、神経上膜の剥離の必要性について評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
末梢神経絞扼性障害として、手根管症候群と肘部管症候群を対象に、本研究を行なっている。本研究施設で手術を受ける手根管症候群または肘部管症候群の患者を対象に、インフォームドコンセントを得た後、術中に電気生理学的検査と神経栄養血管の造影を施行している。対象となった症例は、術前に画像検査、電気生理学的検査、理学所見を記録し、手術を行った。 本研究で行なっている術中の電気生理学的検査や神経栄養血管の造影法と同様な報告は、日本を含めた他国にも認めなかった。そのため、評価方法の一般的な基準や造影剤の適切な投与量は不明であった。特に血管造影においては試行錯誤を要した。平成23年度は、術中の電気生理学的検査や血管造影の施行方法について検討を重ね、検査方法と評価方法を確立させた。平成24年度は、前年度に確立した施行方法を用い、症例数を増加させた。 現在までの結果で、神経自体の線維化が重度であると考えられる重度末梢神経絞扼性障害の症例において、神経上膜剥離の効果が著明に認められた。靭帯等による外部からの神経圧迫を解除した後に、神経上膜を剥離することで、電気生理学的検査で伝導速度の改善と血管造影で造影効果の上昇を認めた。これらの予備試験の結果を、日本国内および海外の学会で報告した。同時に日本語での論文の作成も行なった。
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今後の研究の推進方策 |
末梢神経絞扼性障害の術後結果が改善の見込みがなくなるとされている期間は、手根管症候群で1年、肘部管症候群で2年と一般的に考えられている。特に本研究の手根管症候群の症例で、術後の最終成績が判明するものが複数存在する。これらの最終成績を評価・記録し、それぞれの術前の評価と比較する。これらの比較評価と、術中の電気生理学的検査と血管造影の結果との関係についても考察する。更に過去の報告と比較検討を行い、神経上膜剥離の効果と必要性についても考察する。肘部管症候群は、前述のごとく、最終成績が判明するまで長期間を要する。1年ごとの経過を記録し、最終評価時までの成績を、時系列で評価する予定である。 本研究初年度と比較すると、血管造影装置の開発および機能が進歩している。現在はhandyタイプの近赤外線蛍光画像装置を用いているが、手術用の顕微鏡に近赤外線蛍光装置が内蔵されているものが近年販売されている。このような最新の機器を用いることで、末梢神経のような微細な組織の栄養血管の描出が、より正確にできるかどうかも検討を加えていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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