研究課題/領域番号 |
23592173
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
吉田 宗人 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60201018)
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研究分担者 |
中塚 映政 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (30380752)
谷口 亘 和歌山県立医科大学, 医学部, その他 (20453194)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / ROS / in vivo パッチクランプ法 / 脊髄膠様質 / 神経障害性疼痛 / フリーラジカル / 活性酸素種 / 脊髄損傷後疼痛 |
研究概要 |
成熟ラット脊髄スライスにパッチクランプ法を用いて、膜電位固定下 (-70 mV)で興奮性シナプス後電流 (EPSC)を記録した。ROSドナーであるt-BOOH (10 mM)を5分間灌流投与すると、記録した全ての膠様質細胞で、EPSCの発生頻度ならびに振幅は増加した。t-BOOHによるEPSCの発生頻度ならびに振幅の程度はそれぞれコントロールの349 ± 69% (n=13, p<0.05)、178 ± 15% (n=13, p<0.05)であった。また、t-BOOHの反復投与を行ったところ、その作用に脱感作はみられなかった。AMPA受容体拮抗薬であるCNQX (20 μM)存在下ではt-BOOHを5分間灌流投与してもsEPSCは観察されなかった。さらに電位依存性ナトリウムチャネル阻害薬であるテトロドトキシン(TTX)存在下で微小興奮性シナプス後電流 (mEPSC)を観察したところ、t-BOOHの灌流投与でmEPSCの発生頻度ならびに振幅が増加した。その発生頻度ならびに振幅の程度はTTX単独投与時と比較してそれぞれ510 ± 222% (n=5, p<0.05)、171 ± 29% (n=5, p>0.05)であった 。次にTTX存在下におけるt-BOOH投与前後でのmEPSCの発生数及び振幅の分布を調べたところ、t-BOOH投与によってmEPSCの発生数が大きく増加し、全体のピークが低振幅から高振幅にシフトしたが、高振幅のmEPSCはt-BOOHによって伝達物質を含んだシナプス小胞が同期的に大量放出された結果であることによるものかと考えた。以上の結果から、ROSは脊髄膠様質細胞に入力するシナプス前終末に作用してグルタミン酸の過剰放出を惹起することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脊髄スライス標本を用いて行う予定であった薬理学的な研究は予定通り達成できている。しかし、脊髄損傷後疼痛モデルにin vivo パッチクランプ法を適用して行う解析はまだデータが十分にそろっていないため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、脊髄損傷後疼痛モデルラットにin vivo パッチクランプ法を用いたデータを蓄積していき、脊髄損傷後疼痛にROSが関与するメカニズムに関して解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用に関しては、研究に用いるラット代、薬品代に使用するとともに、データ解析ソフト(インターメディカル社、pClamp10、900000円)を購入予定としている。
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