研究課題/領域番号 |
23592175
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
青木 保親 東邦大学, 医学部, 准教授 (70584001)
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研究分担者 |
中島 新 東邦大学, 医学部, 准教授 (60583995)
大鳥 精司 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40361430)
中川 晃一 東邦大学, 医学部, 教授 (30400823)
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キーワード | 椎間板 / 腰痛 |
研究概要 |
椎間板性腰痛発症メカニズムに神経栄養因子が関与している可能性があると考えられている。腰椎変性疾患患者において手術時に摘出した椎間板における神経栄養因子の発現を調査して、臨床症状との関連を調査している。腰椎変性疾患患者の脊髄造影時に得られる脳脊髄液においては神経栄養因子の発現は認められなかったが、軸索の障害を反映するpNFHの発現を認めたため、研究を行ったが、頚髄症、胸髄症患者と比べ発現量が有意に少なく、腰痛の程度との相関は認められなかった。 腰椎椎間板検体は腰椎変性疾患患者55例より摘出した60椎間板を摘出し、研究を行った。変性髄核組織中のNGF、BDNF発現量をELISA法にて測定し、椎間板ヘルニア患者(ヘルニア群)とそれ以外の腰椎変性疾患患者(その他群:腰椎すべり症、脊柱管狭窄など)、椎間板変性の程度、腰痛の有無で発現量に違いがあるか調査したところ、NGF、BDNF平均発現量はヘルニア群(n=29)で各83.4pg/mg(以下単位略)、 36.5、その他群(n=31)で各64.8、16.2であり、いずれもヘルニア群で有意に高かった。 ヘルニア群とその他群の2群を異なる病態と考え各群で椎間板変性度と各因子の発現を比較すると、ヘルニア群では変性度による発現量の有意差を認めなかった。その他群ではPfirmann grade3-4(n=22)では各59.7、13.5に対し、Grade5(n=9)では各76.7、23.1であり、BDNFは高度椎間板変性例で若干高い傾向が見られた(NGF:p=0.101、BDNF:p=0.099)。両群ともに、腰痛の有無による各因子の発現量の違いは認めなかった。 椎間板ヘルニアを症候性椎間板断裂と考えると、NGF、BDNFは椎間板断裂後に発現増加する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
手術摘出標本における神経栄養因子の測定は、これまではRT-PCR法、Western Blotting法、免疫染色による組織評価による報告のみであったが、本研究において初めてELISA法を用いて数値化して評価することができた。我々の過去の動物実験データより、椎間板断裂が椎間板性腰痛発症のきっかけとなる可能性が示唆されていたが、本研究により椎間板断裂を有する変性椎間板において神経栄養因子の発現が増加していることが明らかとなり、臨床症状との関連を調査する研究に着手するところまでこぎつけることができた。その点では貴重なデータを得ることができたが、臨床検体の収集の遅れから、当初の研究期間内に手術後の臨床症状を最終評価することができておらず、次年度への課題を残すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
1、 対象患者の臨床症状(腰痛、下肢痛、下肢症状)と神経栄養因子発現量との関連性を調査する。 2、 椎間板内での神経栄養因子の局在を評価するために、手術摘出標本を免疫染色法にて行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
期間内に組織標本の評価を終了することができなかったため、次年度に継続して免疫染色法を用いた組織評価を継続する必要が生じたため。 次年度には、手術摘出椎間板標本における神経栄養因子(NGF、BDNF)の局在を調査するため、免疫染色法による評価を行い、学会発表、論文発表を行う予定である。
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