研究課題
椎間板断裂時に誘導されるnerve growth factor(NGF)等の神経栄養因子が椎間板性腰痛の発症に関与している可能性が示唆されている。腰椎変性疾患患者55例より摘出した60椎間板の変性髄核組織中のNGF、BDNF発現量をELISA法にて測定し、椎間板ヘルニア患者とそれ以外の腰椎変性疾患患者(腰椎すべり症、脊柱管狭窄など)、椎間板変性の程度、腰痛の有無で発現量に違いがあるか調査したところ、NGF、BDNF平均発現量はヘルニア群(n=29)で各83.4pg/mg(以下単位略)、 36.5、その他群(n=31)で各64.8、16.2であり、いずれもヘルニア群で有意に高かった(NGF: p=0.031、BDNF:p=0.013)。各群で椎間板変性度と各因子の発現を比較すると、ヘルニア群では変性度による発現量の有意差を認めなかった。その他群ではPfirmann grade3-4(n=22)では各59.7、13.5に対し、Grade5(n=9)では各76.7、23.1であり、BDNFは高度椎間板変性例で若干高い傾向が見られた(NGF:p=0.101、BDNF:p=0.099)。両群ともに、腰痛の有無による各因子の発現量の違いは認めなかった。患者椎間板免疫染色を行ったところ、HE染色標本においてはヘルニア群で炎症性細胞の浸潤がみられる傾向があったが、BDNFは椎間板細胞(軟骨細胞)に発現していた。今回の結果より椎間板断裂がNGF、BDNF発現誘導を介して、椎間板性腰痛発症のトリガーとなる可能性が示唆された。
すべて 2014
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Arthritis Research &Therapy
巻: 16-4 ページ: R159
10.1186/ar4674.