研究概要 |
臓器移植時に生じる抗原提示細胞とT細胞間のcostimulatory signalのブロックにより、複合組織移植である同種肢移植における拒絶反応の抑制が可能であることを証明する研究を進めた。H23年度までの研究により、costimulatory signalの代表的系であるCD28/B7系をブロックするCTLA41g蛋白単独投与による同種肢移植の生着延長効果を証明したが、単独での効果は不十分であった。H24年度の目標は、第3のCD28ファミリー分子であるICOS/B7RP-1系のブロック効果を持つICOSIgを単独投与またはCTLA41gと併用投与し、同種移植モデルにおける拒絶反応抑制効果を判定することである。まず、遺伝子工学的手法によりICOSIg蛋白を精製し、ラット同種肢移植モデルに単回投与した。vehicle投与群では移植後平均約6日目に拒絶反応(外観上の移植片のescharformationの形成)を生じるのに対し、ICOSIg蛋白単独投与群では約13日と有意な生着期間の延長効果を認めた。また、ICOSIg蛋白とCTLA41g蛋白の併用群では約27日とさらなる延長効果を確認した。術後の血中サイトカイン濃度において、ICOSIg単独群ではIL-4, 10、TNF-αの抑制効果を、一方併用群ではIL-2, 4, 10、IFN-γ、TNF-αの抑制効果を認め、併用群で有意に拒絶反応抑制効果が高いことが明らかとなった。しかしながら、肝臓や心臓といった他臓器移植モデルにおけるcostimulatory signalのブロックの有効性に比べ、複合組織移植では生着延長効果は少なかった。複合組織移植では皮膚や筋などの高い抗原性の臓器を含んでいるため、より高い拒絶反応抑制効果が必要であり、今後持続的に蛋白を作用させるため、ウイルスベクターを用いた群での検討を検討している。
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