研究課題
我々は,骨への組織特異性に優れた新規プラチナ製剤を独自に開発し,すでに特許を取得した.今後この新規プラチナ製剤を用いた骨肉腫化学療法を臨床応用へ繋げることを目指し,本研究を計画した.骨肉腫に対する化学療法は,1970年代にメトトレキセートとシスプラチンが導入されて,治療成績は向上したものの、その後有効な薬剤の開発は進まず治療成績は頭打ちとなっていた.我々はシスプラチンの作用増強効果のあるカフェインの基礎的研究を行い、1989年より悪性骨軟部腫瘍に対するカフェイン併用化学療法を臨床応用した。厚生労働省の高度先進医療の認定を受け、初診時に肺転移を有さない症例に対しては90%を超える5年生存率を実現している.しかしながら、肺転移を有する症例や再発例では治療が困難であり、さらなる治療効果を求め、新規プラチナ化合物の合成を行った.この化合物は骨親和性が高く、基礎実験では癌腫において,シスプラチンに比して高い抗腫瘍効果を確認しており,さらに安全性試験では,水溶性が高く腎障害が軽微であることをすでに明らかにしている.スプラチンの作用増強効果が報告されているキサンチン誘導体(カフェイン)を併用することで,新規合成プラチナ化合物の抗腫瘍効果を高め,骨肉腫の治療成績をさらに向上させることを動物実験により明らかとすることを目標とした.これまでにin vitroの研究により新規プラチナ製剤がアポトーシスを誘導することを確認しており,ヌードマウスを用いた予備実験により投与量の設定を行ってきた.昨年度はカフェインによる抗腫瘍効果の増強につき検討し,マウスを用いた本実験を計画した.また,シスプラチン耐性骨肉腫株に対する抗腫瘍効果を確認する目的でシスプラチン耐性骨肉腫株の樹立にむけた培養も計画した.
2: おおむね順調に進展している
in vitroにおいて,カフェインによる抗腫瘍効果の増強がシスプラチン同様に引き起こされていることを確認できた.in vivoのマウスに関する研究は骨肉腫モデルマウス作成効率が予定よりも低かったが,順調にマウス数を重ねている.シスプラチン耐性株作成は順調に進み,次年度,この細胞株を用いた研究を遂行できる見通しである.
in vivo実験を進め実験動物数を予定数まで行い検討するとともにin vitroではシスプラチン耐性骨肉腫細胞株を用い新規プラチナ製剤がシスプラチンとの交叉耐性を有するかどうかに関して検討を予定している.
実験が年度をまたいでおり試薬の購入時期が若干ずれたために生じたものであり,次年度に繰り越して積極的に研究に活用していく予定であるヌードマウスを引き続き購入予定している.研究結果に関しては日本整形外科学会,米国整形外科学会に発表を予定しておりその旅費として研究費を使用する予定である
すべて 2013
すべて 学会発表 (1件)