研究課題/領域番号 |
23592181
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西田 佳弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50332698)
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研究分担者 |
筑紫 聡 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (90378109)
浦川 浩 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60584753)
新井 英介 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40612841)
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キーワード | 糖鎖 / 骨転移 / ヒアルロン酸 / 保存的治療 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
Lewisマウス肺がん細胞株を用いて、マウス脛骨骨転移モデルを作製。ヒアルロン酸合成阻害剤である4-Methylumbelliferone (4-MU)の臨床応用に向けて、すでに臨床で使用されているゾレドロン酸との効果比較、および相乗・相加効果の評価をin vitroおよび、in vivoマウスモデルにて実施した。ゾレドロン酸は腫瘍細胞のアポトーシスを介して、4-MUはヒアルロン酸合成阻害を介してそれぞれ腫瘍抑制効果および骨転移巣抑制効果を示した。(Futamura, Nishida et al, Clin Exp Metastasis. 2013)。骨転移に対する治療法として確立されている放射線治療と4-MUの併用効果を解析した。In vitroとマウス肺がん骨転移in vivoモデルを使用して実施し、放射線による腫瘍細胞の細胞周期障害からの回復を、4-MUが抑制することで相乗効果を示すことを明らかにした(Futamura, Nishida et al, 2013アメリカ整形外科学会)(二村、西田他、日本整形外科基礎学術集会2012、名古屋)(二村、西田他、日本癌学会2012、札幌)。 これらの成果はすでに我々が骨転移治療薬として特許出現している4-MU(特願2010-1065:平成22年1月6日)の効果を証明するものであり、臨床応用への基礎データが確立された。特許公開日は平成23年7月21日、審査請求日は平成24年11月12日である。 骨転移病変における各種タンパク分解酵素の果たす役割を明らかにするためにカテプシンKノックアウトマウスに骨転移を形成させ、野生型マウスの骨転移巣と比較検討している。カテプシンKノックアウトマウスでは骨転移進行が遅延することが判明している。現在そのメカニズムを詳細に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒアルロン酸を標的とした新規保存的治療法の開発・確立という目的を達成するために、ヒアルロン酸合成阻害薬(4-MU)およびヒアルロン酸オリゴ糖による動物を用いた基礎的実験とその成果の発表(Urakawa, Nishida et al, Int J Cancer. 2012)(Urakawa, Nishida et al, J Orthop Res 2012)(Arai, Nishida et al, Br J Cancer 2011)、併用により、骨転移抑制効果の期待できる薬剤であるゾレドロン酸を用いた基礎実験とその成果の発表(Futamura, Nishida et al, Clin Exp Metastasis. 2013)、放射線治療と4-MUの相乗効果実験とその発表(Futamura, Nishida et al, 2013アメリカ整形外科学会)と、着実に成果をあげている。また特許についても審査請求を行い、また国際特許取得に向けて学内外と協力体制を整えつつある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ヒアルロン酸ネットワーク制御による骨転移抑制効果の検討を継続 4-MUによる骨転移抑制効果について、既存の治療法である放射線治療、抗がん剤治療と併用することによる相加・相乗効果について検討をさらに進める。特に至適濃度設定に焦点をあて、マウスに使用する濃度とヒトに使用する濃度で整合性がとれるように実験を進める。 (2)骨転移巣におけるオステオネットワーク、ヒアルロン酸ネットワークに着目した特異的分子発現とその役割の解析 皮下腫瘍および骨転移病変における遺伝子、タンパク発現パターンをマイクロアレイおよびプロテオミクスにて解析し、発現・役割の解析を進める。 (3)骨転移に対するヒアルロン酸合成阻害薬の抑制効果判定における血清中ヒアルロン酸濃度の有用性 マウス骨転移モデルを作製し、4-MU投与により、骨転移巣抑制率と血清中ヒアルロン酸濃度、ヒアルロン酸結合タンパクであるSHAP濃度を測定し、奏功率との関連を解析する。ヒト担がん患者を骨転移あり群となし群に分け、血清中ヒアルロン酸濃度、SHAP濃度を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)骨転移巣におけるオステオネットワーク、ヒアルロン酸ネットワークに着目した特異的分子発現とその役割の解析、については今年度アレイ解析、タンパク発現解析に研究費を使用しなかったため、来年度に本研究費を使用して、実験を進める。 (2)ヒアルロン酸合成阻害(4-MU使用)と抗がん剤の相乗・相加効果の解析を動物骨転移モデルを使用して実施するため、動物購入・飼育・薬剤・軟X線検査試薬購入などに研究費を使用する。 (3)マウス骨転移モデルを作製し、4-MU投与により、骨転移巣抑制率と血清中ヒアルロン酸濃度、ヒアルロン酸結合タンパクであるSHAP濃度を測定する際、および担がんの血清中のヒアルロン酸、SHAP濃度を定量する際に使用するELISA費用、解析費用等に研究費を使用する。
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