研究課題/領域番号 |
23592184
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 伸之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50324752)
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研究分担者 |
竹中 聡 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00588379)
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263261)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60191558)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨軟部腫瘍 |
研究概要 |
まず先行研究である基盤研究C(課題番号08099681)で得た成果を論文発表した。本研究ではさらに骨肉腫肺転移成立過程における肺宿主細胞と骨髄由来細胞の役割を明らかにすることを重点的に実験を行った。先行研究ではGFPマウスのC3Hマウスへのバッククロスを計画したが、時間的制約から作成を断念していた。この反省から文献的に報告のみられるGFPマウスから採取した骨髄細胞をC3Hマウスに移植する方法に変更して再度この課題に取り組んだ。予備実験にて骨髄は生着し体表からもGFPを確認することに成功したものの、LM8マウス骨肉腫細胞を皮下移植しても肺転移は観察されなかった。MHCクラスI分子が異なるため何らかの拒絶反応が生じたと考えられ、骨髄由来細胞の関与を示す結果であったが、さらなる解析は困難と判断した。また先行研究でLM8の初期肺転移巣の形成に肺の血管内皮細胞の関与が示されていたため、ルシフェラーゼを恒常的に発現するLM8細胞を左心室に注射し、尾静注モデル・皮下移植モデルと同様に肺への臓器特異的転移がみられるかをin vivo imaging (IVIS) にて観察した。しかし、心注後1週間でのIVISの観察では腎臓への転移が主となる結果で、4週たっても組織学的には肺転移は観察されなかった。LM8の血管内皮細胞への接着のみでは肺転移巣は成立しえないことを示す結果で、種々の臓器由来の血管内皮細胞の採取と培養が技術的に可能となっているが、この実験系を用いた解析に進むためにはさらに予備データが必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PTH製剤テリパラチドをラットに長期投与して発生する骨肉腫から、さらなる細胞株樹立に努めたが、継代不可能なものが多く、結果的に細胞増殖の活発な1株と緩徐な1株の計2株の樹立に留まった。このためPTH誘発骨肉腫モデルの解析は大きな進展が見られなかった。この遂行上の障害は予測困難な要因によるものと判断している。我々が確立した骨肉腫肺転移モデルを用いた実験では、マウスの系統が異なるため先行研究と同様に困難がある。肉腫治療の現状を考えたとき、青少年に好発する骨肉腫が代表的疾患ではあるが四肢発生例の5年生存率は90%程度と高く、予後改善の余地が残される軟部肉腫も重要な研究課題である。このことから骨肉腫モデルでは比較的簡便なアプローチを選択した。大きなブレークスルーは得られなかったが、着実に知見を得てきており今後の展開に寄与するものと考えている。我々の研究グループでは骨肉腫の他、滑膜肉腫を種々の実験に用いており、次年度以降、さまざまな実験に供することができるよう、in vivo imagingで観察可能な細胞株の樹立を進めた。従来高肺転移株LM8にルシフェラーゼを恒常発現する細胞を実験に用いていたが、その親株であるDunn、また軟部肉腫として滑膜肉腫細胞株に同様のラベルしたものを作成した。また主としてこれらの実験を行う大学院生が1年目であったため、技術習得に時間を要したことも一因で、これらの要因により実質的な成果につながらなかったものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PTH誘導ラット骨肉腫は製剤開発当初しか入手困難でその細胞株は貴重であることから、ヌードマウスへの生着をさらに試みる。加えて病理学的解析とPTH応答性をすでに多くの知見が得られているラット骨肉腫細胞株UMR106と比較検討する。これらのデータをまとめて英文雑誌へ投稿へと進める。また当初の計画に立ち返り、平成24年度の研究を推進する。肉腫肺転移機構の解析を重点的に、骨肉腫から軟部肉腫(とくに滑膜肉腫)にも対象疾患を拡げて実施する。LM8肺転移モデルでは、皮下移植後の末梢血中および肺組織中のEPC, MSCを種々の条件下にてFACS解析にて定量する(経時的変化、親株DunnとLM8との比較、皮下移植モデルと尾静注モデルとの比較、異所性皮下移植肺モデル、Collagen gelなどにLM8培養上清を含浸させ、cell freeな系との比較など)。またEPC, MSCをあらかじめ尾静注したマウスにおける肉腫肺転移に与える影響を種々の条件下にて比較(VEGF, IGF, IL-6などのknock downした場合の影響もしくは中和抗体投与時の影響など)。これらの解析からEPC, MSCの転移形成における役割を明らかにするとともに、主にin vivo系を用いて骨髄由来細胞動員に果たす腫瘍細胞や肺組織の影響を明らかにする。すでに知見が得られている分子を中心に作用機序についても検討を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究継続のため、平成23年度の研究経費とほぼ同等の経費が必要である。実験の中心となる大学院生は2年目となり技術の習熟が進み、本年度は昨年より研究推進しやすい状態となる。前年度繰り越した費用と合わせて昨年度同様の研究費が必要と見込まれる。
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