研究課題/領域番号 |
23592186
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
内尾 祐司 島根大学, 医学部, 教授 (20223547)
|
研究分担者 |
田口 哲志 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体機能材料ユニット, MANA研究者 (70354264)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 半月板断裂 / 生体接着剤 / プラズマ |
研究概要 |
本年度は生体接着剤の硬化成分である酒石酸のカルボキシル基に活性エステル基を導入した架橋剤(DST)と接着成分であるヒト血清アルブミン(HSA)との接着強度を上げる至適組み合わせ条件の検索を行った。ブタの半月板を用いて接着強度を測定すると、DST及びHSA濃度は各々の濃度が高いほど接着強度は漸増し,DST濃度が0.1mmolでHSA濃度が42w/v%時に接着強度が0.1N/mm2となり、最大となることが判明した。 次に、DST濃度が0.1mmolおよびHSA濃度42w/v%の条件下での本剤の半月板断裂に対する最大接着強度を測定すると78.2± 27.5 kPaとなった。一方、対照接着剤であるシアノアクリレート系接着剤は766.6±221.1 kPaであり、フィブリン系接着剤は43.1±15.2 kPaであって、本生体接着剤の接着強度は,シアノアクリレート系接着剤には劣るものの,フィブリン系接着剤に対しては約2倍の接着強度となることが明らかになった。生体内での評価も進行中である。 一方、プラズマ照射による半月板への効果の検索するためにポリエチレンテレフタレートを用いてプラズマ照射器で処理条件電力:150W、暴露時間:1時間、ノズルから対象までの距離:10mm、起動ガス:ヘリウム(4 slm)、反応ガス:酸素(主管:0.2 slm,側管:2slm) 窒素(主管:0.2 slm,側管:2slm)という条件で表面電荷をエックス線光電子分光分析装置で測定した。その結果、ヘリウムでは表面電荷に大きな変化ないものの、窒素、酸素では表面電荷が増加し、窒素および酸素プラズマは炭素結合に何らかの変化を与える可能性があることが判明した。このことは細胞接着に対して促進あるいは抑制効果を与えるものと推察した。表面電荷の大きさを変え、培養線維芽細胞の半月板接着が促進されるプラズマ条件を検索中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である生体接着剤のin vitro 至適条件の検索はすでに終了しており、酒石酸のカルボキシル基に活性エステル基を導入した架橋剤(DST)と接着成分であるヒト血清アルブミン(HSA)との接着強度を上げる至適組み合わせ条件の設定は確立できた。疲労試験やひずみ試験は進行中であり、かつ、平成24年度に行う予定のウサギを用いた生体内in vovoでの接着実験もすでに開始しており、準備段階では半月板の接着は可能で、異常な異物反応や免疫反応などの有害事象は観察されなかった。本生体接着剤の有効性と安全性が次第に明らかになってきている。 一方、プラズマ照射による半月板への効果の検索については、プラズマ照射に使用するガスはアルゴン、窒素、酸素などを用いた照射条件の設定には時間が必要であった。結果として処理条件電力:150W、暴露時間:1時間、ノズルから対象までの距離:10mm、起動ガス:ヘリウム(4 slm)、反応ガス:酸素(主管:0.2 slm,側管:2slm) 窒素(主管:0.2 slm,側管:2slm)という条件が表面電化を大きくさせ、細胞接着に影響を与える可能性があることが判明した。今後、より電荷を大きくする至適条件の設定とともにそれに対する培養細胞の接着実験が進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在進行中の生体接着剤のin vivo 至適条件の検索をウサギを用い、その有効性と安全性を検証する。また、生体接着剤およびプラズマ処理併用によるin vivo接着効果の検索に際しては、本年度で明らかになった生体接着剤の至適濃度の組み合わせとプラズマ照射条件の組み合わせをどのようにするかが重要となってくる。その組みあわせを求めるのに時間が必要と考えられる。しかし、方法論は明確であるので丹念に実験結果を積み上げていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
生体接着剤のin vivo 至適条件の検索では、生体接着剤の作製費用に30万円を計上する。また、実験動物や培養細胞にかかる費用は当初60万円を計上していたが、多条件にわたる実験が必要であるために、当初の計画を変更して、前年度繰越金を加え109万円とする。また実験補助者を有効に使用して(謝礼金を確保)確実に実験を進めたい。さらに、研究結果を学会に発表して他の研究者の意見を聞き、当該研究の発展につなげていきたいと考える。
|