研究課題/領域番号 |
23592186
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
内尾 祐司 島根大学, 医学部, 教授 (20223547)
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研究分担者 |
田口 哲志 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体機能材料ユニット, 研究員 (70354264)
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キーワード | 半月板 / プラズマ / 生体接着剤 |
研究概要 |
1.生体接着剤の in vivo における接着強度評価:昨年度の研究結果から本年度の実験ではすべてDisuccinimidyl tartarate (DST) 0.1 mmolおよびHuman Serum Albumin (HAS) 42w/v% を選択した。日本白色家兎半月板損傷モデルを作製し、一側に生体接着剤を塗布し接着した。対側は対照として未治療とした。術後3か月での接着部強度は未治療群の1.5倍であった。組織評価では異物反応を認めず、生物学的に癒合していた。以上から、本剤は生体内において短期的には異物反応を惹起せず生物学的癒合を阻害しないことが判明した。 2.生体接着剤デリバリーシステムの検討:ブタ半月板損傷モデルを作製し、損傷部を接着剤で接着し接着剤添加縫合糸で縫合を行った。未処理縫合糸による縫合群を対照とした。固定強度はそれぞれ77±6Nと60±8Nであり、接着剤添加縫合糸群が有意に高い強度を示した。以上から生体接着剤を断裂断面だけでなく縫合糸に添加しすることで、半月板接着強度が上昇することが確認された。 3.プラズマ表面処理が生体接着剤の接着効果に与える影響:ブタ半月板損傷モデルを用い断裂部にプラズマ照射を行った。酸素プラズマを使用し30,60,90秒の3通り照射とした。対照として同条件の非プラズマ温風を照射した。照射直後に接着剤を塗布後、断裂部を接着し接着強度を測定した。接着強度は30秒照射でプラズマ群125.5±13.3kPa,対照群84.7±12.4kPaであり、60秒照射で123.7±12.6kPaと95.3±6.5kP、90秒照射で95.3±43.7kPaと93.6±22.1kPaであり、30秒と60秒のプラズマ処理において有意差を検出した。以上からプラズマ処理が接着に有利に働く何らかの効果を有し、その効果は処理時間によって変化することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において、Disuccinimidyl tartarate (DST) 0.1 mmolおよびHuman Serum Albumin (HAS) 42w/v% を用いることで半月板断裂部の接着強度が最大になる至適条件が明らかになり、本剤の有効性が示されただけでなく、in vivo実験で安全性も確認できた。さらに、本研究の主題であるプラズマ照射が本剤の接着効果を高める新事実も判明した。これらのことは、これまで十分に確立されていなかった無血行野の半月板断裂に対する新しい治療法として十分期待できるものであって、当初の計画通りに順調に研究は進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ照射効果について、至適条件のさらなる探索や培養細胞を用いたプラズマ効果の機序解明およびvivoを用いて半月板断裂接着・癒合効果を評価する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度では行わなかった培養細胞を用いたin vitroの研究に着手する。この実験には生体接着剤作製のための薬品のほか、培養細胞、培養器具、培養液等の確保が必要で、前年度未使用分を使用し、プラズマ処理半月の培養細胞に対する効果を調査し、その機序を明らかにする。また、in vitro実験としてでのブタ半月板を用いた本接着剤とプラズマ照射の効果最大にする条件をさらに探索するためのガス、屍体ブタの半月板や培養細胞や薬品が必要である。さらに、in vivo実験でのウサギや手術に関する薬品等が必要である。
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