研究課題/領域番号 |
23592186
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
内尾 祐司 島根大学, 医学部, 教授 (20223547)
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研究分担者 |
田口 哲志 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体機能材料ユニット, MANA研究者 (70354264)
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キーワード | プラズマ表面処理 / 生体接着剤 / 半月板損傷 |
研究概要 |
昨年度の研究から、1分間の酸素プラズマによる表面処理(作動ガス:ヘリウム4L/min+酸素2.2L/min,電力150W)が半月板に対する生体接着材(DST-HAS)の接着強度を高める効果がある可能性が示唆された。本年度はその効果の真偽を確認すること、および生体内においてその効果が継時的にどのように変化するかという2点を調査した。 1.プラズマ処理効果の真偽 プラズマ曝露時間の影響を確認するため、2011年度と同様ポリエチレンテレフタレート材を対象とし、酸素プラズマ曝露時間を1分とし表面荷電変化をエックス線電子分光分析装置で測定した。電力やガス種などその他の条件は上記と同一である。結果、酸素および炭素を示す結合エネルギーで減少を認めた。一方生体外力学試験について、サンプル間誤差軽減を図るため専用に測定器具を作製し、さらにサンプル数を増やしたところ、酸素プラズマ処理群82.5±18.8kPa、非処理群78.5±15.7kPaであり、両群間に統計学的有意差を認めなかった。以上から曝露時間1分の酸素プラズマ処理は表面電荷に変化を生じるが、処理直後ではその変化が実用的なDST-HAS接着力増強効果には繋がらないことが判明した。しかしながらプラズマ処理が表面構造に変化を起こすことは確認できたので、条件を変えて調査を継続する必要がある。 2.生体内での継時的変化 生体に対するプラズマ処理の影響を検証するため、家兎を用いた生体実験を行った。両側膝外側半月板に対し人工的に損傷を作製した。一方を酸素プラズマ処理後にDST-HASを塗布し、対側は温風処理後に塗布し対照群とした。術後4,8,12週で断裂部の変化を調査した。結果、術後4週ではプラズマ処理群で治癒が促進される傾向を認めた。8週および12週では両群に差を認めなかった。以上から酸素プラズマ処理は継時的には半月治癒に有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酸素プラズマ処理の効果の真偽確認に時間を要した。当初予定していた細胞培養実験や生体実験は中途である。
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今後の研究の推進方策 |
作動ガスを変更し、処理直後でのDST-HAS接着力向上に効果がある設定を模索する。来年度は表面窒化に着目し窒素やアンモニアを作動ガスに加え処理を行う予定である。また、生体内実験において継時的にはプラズマ処理が有効な可能性が示唆されたので、今年度採取したサンプルの組織学的評価を行うなど検証を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
酸素プラズマ処理が生体接着剤強度増加効果を有するかどうか真偽確認に時間を要した。そのため当初予定していた細胞培養実験や大動物に対する生体実験を実施していないので余剰金を生じた。 プラズマ処理そのものには、物質表面構造に変化を生じることが確認できたので、ガス種を変え接着に有効な処理条件を模索していく。また、細胞への効果や生体実験も逐次行っていく。
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