研究実績の概要 |
昨年度までの研究結果から、酸素プラズマを用いた半月板表面に対する60秒間の処理は、表面構造に変化を与えるものの、生体接着剤(DST-HAS)による半月板接着初期固定力に有意な差を認めないことがわかった。一方生体内では同様のプラズマ処理が経時的な半月板治癒に有利な効果をもたらす可能性が示唆された。 ここでプラズマ処理時間に関し、より短時間の処理が細胞の接着や分化促進に有利である可能性が報告された(Haertel B et al. Biomol Ther, 2014)。処理時間の短縮が細胞レベルの変化を促進し、経時的な半月板治癒効果を高める可能性がある。そこで本年は半月板から抽出した線維軟骨細胞に対するプラズマ処理の影響をより短い処理時間で区切り検証した。 家兎の膝半月板を酵素処理後に遠心分離処理し、線維軟骨細胞を採取した(1.5 x 10^6/ml)。培地にフィブロネクチンコーティング(F群),アルブミンコーティング(A群)および未処理(N群)のウェルを用意した。プラズマ処理は昨年度までの設定を踏襲し、反応ガスに酸素とアンモニアの2種を設定した。また処理時間は15,30,60秒の3通りを設定した。コントロールとして各培地の非プラズマ処理群を設定した。プラズマ処理直後に細胞を散布し、1時間後に接着した細胞数を比較した。結果、いずれの処理時間でも群間に統計学的な有意差は認めなかった。 今回の実験では有意な変化を捉えることができなかったが、電力やガス流量を強くし、より強力なプラズマ処理を行えば有意な差を生じる可能性がある。一方で強いプラズマは高温となるため、その制御が課題となる。そこで液体プラズマを使用した新たな実験系を構築し実験を継続して行うことが必要と考える。
|