研究課題/領域番号 |
23592189
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中村 修 香川大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40532685)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | mTOR経路 / オートファジー / アポトーシス |
研究概要 |
種々のがん治療において、効果が期待される分子標的治療薬の一つにmTOR阻害薬がある。本研究の目的は、骨軟部肉腫細胞株においてmTOR阻害薬によるオートファジー様細胞死が誘導され、更にそのオートファジーの抑制により、アポトーシスが誘導されるかどうか検証し、骨軟部肉腫治療について新たな知見を得ることである。平成23年度は軟部肉腫細胞株4種を検証した結果、Nara-H細胞において、非常に興味深い結果が得られたため、Nara-H細胞株を使用して、詳細な検討を行った。。抗腫瘍薬は、mTOR阻害薬としてテムシロリムスを、オートファジー抑制薬として3-MAを使用した。。本年度の成果としては、骨軟部肉腫細胞株での、mTOR抑制薬、オートファジー抑制薬による抗腫瘍効果をCell Proliferation Assayにて確認。ついで、siRNAを遺伝子導入し、mTOR遺伝子のノックアウトを行い、オートファジー関連遺伝子の発現をリアルタイムPCRで評価。更に、モノクローナル抗体として、Akt、mTOR、4EBP-1、p70S6、LC-3、PARP、Caspase3などを購入し、順次Western blotting法を行った。また、フローサイトメトリーにより、TUNEL陽性細胞を評価し、アポトーシスを評価した。最後に、形態学的評価により、オートファジー(MDC染色)およびアポトーシス(Annexin V染色)の発現を証明した。以上の研究結果は、当初予想した通り、mTOR抑制薬により、オートファジーの誘導が確認され、このオートファジーを抑制すると、アポトーシスが誘導されるという結果が得られた。これらの成果は国際整形外科基礎学会学術集会(2012年2月、アメリカ・サンフランシスコ)にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨軟部腫瘍株の一つであるNara-H細胞を使用し、siRNAを遺伝子導入し、mTOR遺伝子のノックアウトを行い、オートファジー関連遺伝子の発現をリアルタイムPCRで評価したところ、予想通りmTOR遺伝子の抑制により、オートファジー関連遺伝子の発現増加を認めた。更に、モノクローナル抗体として、Akt、mTOR、4EBP-1、p70S6、LC-3、PARP、Caspase3などを購入し、順次Western blotting法を行ったところ、mTOR抑制薬によるオートファジーの発現が確認され、オートファジー抑制薬の併用により、アポトーシスの発現が増強された。また、フローサイトメトリーによる評価でも同様の結果を得た。また、形態学的評価により、オートファジー(MDC染色)およびアポトーシス(Annexin V染色)の発現を確認したところ、mTOR抑制薬によるオートファジー細胞の増加と、オートファジー抑制薬の併用による、オートファジー細胞の減少およびアポトーシス細胞の増加を認めた。以上の実験結果から、おおむね研究は順調に進めることができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、mTOR抑制薬としてテムシロリムスを、オートファジー抑制薬として3-MAを使用してきたが、今後はmTOR抑制薬としてラパマイシンを、オートファジー抑制薬としてU0126を使用することとした。理由として、mTOR抑制薬として、より一般的な薬剤を使用したいこと(テムシロリムスはラパマイシンのanalogueの一つである)、またMAPK経路の抑制薬であるU0126は当科での研究実績があり、更に最近の研究では、この薬剤がオートファジーを誘導するとの報告があることなどが挙げられる。この2つの薬剤を使用して、Nara-H細胞株や、またその他の骨軟部腫瘍株を使用して、これまで進めてきた生化学的実験を行う予定としている。また、研究成果は平成25年3月に米国テキサス州で開かれる、国際整形外科基礎学会学術集会に演題登録を行い、発表する予定としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の科研費で購入予定の最も大きな物品としては、Nano Photometerを購入する予定である。その理由は、現在リアルタイムPCRを行う上で、RNAの定量を他科の機器を借りて定量しているのであるが、当科実験室でRNA定量ができる体制を整えたいからである。また、mTOR抑制薬、オートファジー抑制薬、その他Western blotに必要なモノクローナル抗体や、フローサイトメトリーに要する試薬、形態学的実験に用いる試薬などは、これまでと同じく備品として購入し、Nara-H細胞以外の腫瘍株を用いて同様に実験を進めていく予定である。
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