カフェインおよび化学療法剤を内包したSpan80ベシクルに腫瘍選択性を持たせ、目的とする細胞にベシクル内容物が送達されることを検証、in vitroにおいて骨腫瘍細胞株と正常細胞株に対する細胞障害効果を解析し、腫瘍を移植したマウスを用いた治療モデルにおいて、このベシクルが選択制を持って腫瘍に内容物を送達するか、カフェイン・化学療法剤内包による治療効果があるかを解析するとともに、毒性・副作用の解析を行った。具体的には、カフェイン及び抗がん剤イフォスファミドを内包したベシクルが腫瘍に特異的・効率的に内包物を送達するか、また、in vitroにおける抗腫瘍効果と毒性を解析することを主な目的に、以下の研究を行い、3年間の研究内容を総括した。 1.in vitroにおけるカフェインおよび抗がん剤内包ベシクル投与による抗腫瘍効果・アポトーシス誘導のフローサイトメトリー解析 2.in vivoにおけるカフェインおよび抗癌剤内包ベシクルを用いた治療モデル実験。 3.治療モデルに於ける有害事象の詳細な解析。 これらの実験の結果として、当初想定していた半量の抗癌剤内包ベシクルおよびカフェイン内包ベシクルの投与が、もっとも副作用も少なく、抗腫瘍効果も高いことを見いだした。また、抗癌剤内包ベシクルを投与した雄マウスの孕妊性試験を行ったところ、投与後に孕妊性を保持し得ることを明らかにした。イフォスファミド内包ベシクルおよびカフェイン内包ベシクルの投与により、最適な腫瘍特異性の高い治療モデルを確立した。今後さらに臨床応用を企図した大型動物を用いた実験系の展開が期待される。
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